コンテイジョン

2011年作品
監督 スティーヴン・ソダーバーグ 出演 マリオン・コティヤールマット・デイモン
(あらすじ)
香港への出張から帰国したベス・エンホフは、突然、ミネソタの自宅で倒れ、夫ミッチ(マット・デイモン)によって病院に運ばれたものの、あえなく息を引き取ってしまう。彼女以外にも、香港、ロンドン、東京といった世界各地でこの新たな感染症による死亡者が確認されるに至り、WHOは医師のレオノーラ・オランテス(マリオン・コティヤール)を香港に派遣して感染ルートを特定しようとする….


スティーヴン・ソダーバーグ監督による社会派パニック映画。

様々なエピソードを同時並行的に描いていくという群像劇的な手法が採用されており、エンホフ夫妻やオランテス医師以外にも、疾病予防管理センター(CDC)のチーヴァー(ローレンス・フィッシュバーン)、ミアーズ(ケイト・ウィンスレット)両医師やデマを撒き散らすブロガーのアラン・クラムウィード(ジュード・ロウ)といった面々が、互いに影響を受けながらも、それぞれのドラマを繰り広げる。

ストーリーはいたって真面目であり、事件の背景に国家的な陰謀が絡んでいる訳ではなく、産業スパイによるワクチンの奪い合いも起きない。公的な機関で働く医師たちはただただ誠実にワクチンの開発や感染ルートの解明に全力を尽くすのみであり、逆に、インターネットを使って政府の陰謀を主張するクラムウィードは悪質なデマゴーグであった。

パニックを起こした民衆が暴動を起こす様子なんかも描かれているが、まあ、災害や大規模停電のあったときに現実のアメリカ社会で起きているものと大差なく、最初の発症から数ヵ月後にワクチンが製造されてパニックが収まっていくというラストも至極まとも。正直、ソダーバーグ監督の誠実さには好意的な印象を抱くものの、映画的には少々の物足りなさを感じるのも否定できない。

そして、そんな真面目すぎるストーリーに色を添えるのが、豪華な俳優陣であるが、上映時間がわずか106分ということもあり、登場するなりすぐに死んでしまうベス役のグウィネス・パルトロウをはじめ、それぞれの出番はさして多くない。年々逞しさを増しているケイト・ウィンスレットが演じているミアーズ医師まであっさり死んでしまうのは、ちょっと意外でもあった。

ということで、時間的には、マット・デイモン扮するミッチの出番が一番多いような気がするが、単なる民衆の一人に過ぎない彼にはあまり見せ場は用意されておらず、まあ、繰り返しになるが、本当に真面目に作られた映画でした。