マッチ工場の少女

1990年作品
監督 アキ・カウリスマキ 出演 カティ・オウティネン、ヴェサ・ヴィエリッコ
(あらすじ)
マッチ工場で働くイリス(カティ・オウティネン)は、裏通りの狭いアパートで母や義父と同居生活。ダンスホールに行っても誰からも相手にされない彼女は、いつもなら一家の生活費に消えてしまう自分の給料を使って派手なドレスを購入し、それを着て夜の街へ出掛けると、あるバーでアールネ(ヴェサ・ヴィエリッコ)という男から声をかけられ、そのまま一夜を過ごすことに….


アキ・カウリスマキの“負け犬三部作”の中の一作。

この題名からすぐに思い浮かぶ“マッチ売りの少女”と同様、本作の主人公イリスの家庭環境も決して恵まれたものとはいえないのだが、彼女に扮しているカティ・オウティネンの年齢が公開当時29歳ということで、“少女”と呼ぶのには相当抵抗がある。

まあ、これに関しては、英語の題名である“The Match Factory Girl”の直訳なので、仕方ない面もあるのだが、イリスの不幸の主たる原因が、経済的なものというより、男にモテないという実に現実的な問題にあるという点においても、“マッチ売りの少女”との関連性は弱く、ほとんど冗談のレベルだと考えるべきだろう。

さて、アールネと一夜を過ごしたイリスはルンルン気分(=死語)でマッチ工場での単純作業に励むのだが、結局、彼は彼女のことを売春婦以上のものとしては考えていないことを知り、不幸のどん底へ。ここまではとても悲惨なストーリーであり、次第に見続けるのが苦痛になってくるのだが、そこから攻守が一気に逆転するのは「キャリー(1976年)」と同じ仕組みだね。

勿論、イリスは超能力者ではないので、血みどろのホラー映画にはならないのだが、そんな彼女が選んだ彼女らしい地味ーな武器は“猫いらず”。再びルンルン気分になった彼女が、それをアールネや両親等に飲ませて回るシーンは見事なブラックコメディになっており、70分という中途半端な上映時間も、本作に限って言えばちょうど良い長さだった。

ということで、「罪と罰 白夜のラスコーリニコフ(1983年)」に続き、こちらも面白くなかったらどうしようかと心配していたのだが、それが杞憂に終わって一安心。次は、彼の出世作と言われる「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ(1989年)」を見てみようと思います。