レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う

1994年作品
監督 アキ・カウリスマキ 出演 マッティ・ペロンパー、ザ・レニングラードカウボーイズ
(あらすじ)
メキシコでの成功も、テキーラのせいですっかり棒に振ってしまったレニングラードカウボーイズ。そんな彼等の前に現れたのが、長年姿をくらませていた元マネージャーのウラジミール(マッティ・ペロンパー)であり、自らをモーゼと名乗った彼は、彼等を故郷に連れ戻すと宣言。手土産代わりに自由の女神の鼻を盗んだモーゼと合流した一行は、大西洋を横断してフランスに上陸するが….


アキ・カウリスマキが、「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ(1989年)」の公開から5年後に発表したその続編。

テキーラに溺れて命を落としてしまった者やアメリカに残る決心をした者もいるため、モーゼに従って故郷を目指すことになるのは、4人のメンバーとお邪魔虫のイゴールの計5人だけ。しかし、故郷から彼等を迎えにきた若者たち(?)がフランスで合流するため、バンドのメンバーは一気に10人以上に膨れあがる。

まあ、前作同様、本作もこんないい加減な設定で進んでいくのだが、正直、彼等のトレードマークであるリーゼントヘアーやヘンテコな靴の賞味期限は前作で切れてしまっており、それだけではとても笑えない。また、元からいるバンドのメンバーにメキシコ人の服装をさせているせいもあってか、前作の笑いの根底をなしていた“社会主義的退廃感”は希薄であり、舞台がヨーロッパということで周囲の雰囲気とのギャップという面も弱い。

設定に“出エジプト記”を持ってきたため、モーゼが水の上を歩いたり、唯物論者と議論するといった類いのパロディが可能になっているのは良いのだが、CIAの諜報員ジョンソンの起用を含め、通常のコメディ映画と共通する要素が増えている分、(前作では笑いのネタとして許容されていた)演技力の不足やテンポの悪さといった点が欠点として目に付くようになる。結局、この手の脱力系コメディ映画で二匹目のドジョウを狙うのはなかなか難しいんだなあ、というのが、本作を鑑賞した後の正直な感想だった。

ということで、本作を楽しめなかったもう一つの原因として、「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」を見た直後の鑑賞だった、ということもあるのかもしれない。カウリスマキの計算どおり、間に5年という歳月を挟んでいれば、再び新鮮な感覚で楽しむことが出来たのかもしれません。