素直な悪女

1956年作品
監督 ロジェ・ヴァディム 出演 ブリジット・バルドークルト・ユルゲンス
(あらすじ)
南仏の海沿いの町サン・トロペーズ。18歳になる孤児のジュリエット(ブリジット・バルドー)は、口喧しい養母のもと奔放な生活を送っていたが、町で酒場を経営している初老の実業家エリック(クルト・ユルゲンス)は年甲斐もなくそんな彼女に首ったけ。しかし、彼女が憧れているのは今は隣町で働いているアントワーヌであり、久しぶりに帰ってきた彼から一緒に町を出ようと誘われた彼女は….


ブリジット・バルドー主演によるロジェ・ヴァディムの初監督作品。

結局、アントワーヌはジュリエットを“遊び相手”としてしか考えていなかったことが明らかとなり、彼女は失恋。さらに、養母の報告によって孤児院に送り返されそうになるのだが、以前から彼女のことを想っていたアントワーヌの弟ミシェルからの突然のプロポーズを受け入れることによって、何とか窮地を免れる。

まあ、ジュリエットの場合、金や名誉が目的で男心を弄ぶという訳ではなく、単に自分の欲望に忠実なだけ(=その意味で、この邦題は本作にピッタリだと思う。)なんだろうが、その抜群の容姿が人目を惹かない筈もなく、そんな彼女が薄布一枚まとっただけのようなあられもないお姿で街中を闊歩する様子は、確かに犯罪的と言えるかもしれない。

幸い、てっきり悪役かと思っていた実業家のエリックが、本当はとても紳士的な人物であり、愛するジュリエットの幸せを一番に考えて行動してくれたおかげで、最後は一応のハッピーエンドを迎える訳であるが、とびきりの美女を妻に迎えてしまったミシェル君の苦悩は、あの後も末長く続いたのだろうと思われる。

その誠実ではあるが風采の上がらない青年ミシェルに扮しているのは、映画デビューして間もない頃の名優ジャン=ルイ・トランティニャンであり、公開当時26歳。三人兄弟の真ん中という設定であり、華やか雰囲気を持つ兄や弟に比べて、明らかに見劣りする印象なのだが、まあ、そんなところも彼の演技力の賜物なんだろう。

ということで、本作で監督デビューを果たしたロジェ・ヴァディムは、当時、バルドーと正式な婚姻関係にあった訳であるが、彼女が実生活においてもジャン=ルイ・トランティニャンと恋に落ちてしまったために、翌年離婚したとのこと。決してヴァディムに同情しようとは思わないが、そのことがその後の彼の華麗なる女性遍歴の原因になったのだとすれば、やっぱり一番悪いのはバルドーということになるのでしょうか。