ふたりの女

1960年作品
監督 ヴィットリオ・デ・シーカ 出演 ソフィア・ローレンジャン=ポール・ベルモンド
(あらすじ)
第二次世界大戦当時のイタリア。夫を亡くし、女手一つで食料品店を経営していたチェジラ(ソフィア・ローレン)は、激しい空襲が続くローマからの疎開を決意し、一人娘のロゼッタを連れて生まれ故郷の農村へとやってくる。村には既に大勢の避難者が押し寄せており、食糧事情も悪化していたが、村の青年ミケーレ(ジャン=ポール・ベルモンド)の助けもあって何とか日々の暮らしを送っていた….


ソフィア・ローレンが第34回アカデミー賞で主演女優賞を獲得した作品。

チェジラは、田舎から都会に出てくるためには年の離れた男性との愛のない結婚も辞さないという、ある意味、とても行動的で逞しい女性なのだが、インテリ青年のミケーレの台詞にもあるとおり、そんな彼女であっても“戦争の悲惨さからは誰も逃れられない”というのが本作のテーマになっている。

まあ、“悲惨”といっても、中盤までは主に食糧面でのことに限られており、本当の悲惨がチェジラとロゼッタの母娘に降りかかってくるのは物語も終盤に入ってから。ドイツによって占領されていたイタリアはアメリカを中心とする連合国軍によってようやく解放されるのだが、その最中、この母娘は一群の兵士によって暴行を受けてしまう。

しかも、その犯人がドイツ兵でもイタリアのファシスト党員でもなく、連合国軍の兵士であるというのが何とも皮肉であり、要するに、この母娘にとって敵か味方かは国旗によって識別できるものではなく、腕力によって他人の自由を奪おうとする人間は全て敵ということになるんだろう。

主演のソフィア・ローレンは公開当時26歳であるが、堂々とした母親ぶりを披露するなど早くも貫禄十分。一方のジャン=ポール・ベルモンドは見せ場が少なく、ミケーレの最期さえ映像では描かれていないのだが、人伝に知った彼の死により、心を閉ざしていたロゼッタが子どもらしい感情を取り戻すというラストは悪くないと思う。

ということで、脚本的にいえば、暴行の犯人を連合国軍の中のモロッコ兵に設定したのはちょっと唐突であり、ここはアメリカ軍の仕業ということにしておいた方が自然だったと思うのだが、登場人物が皆英語を話すことからも分かるとおり、本作はアメリカ向けに制作されており、まあ、そのあたりへの“配慮”がアカデミー主演女優賞に繋がった一つの理由なのかもしれません。