アビエイター

2004年作品
監督 マーティン・スコセッシ 出演 レオナルド・ディカプリオケイト・ブランシェット
(あらすじ)
父親から莫大な遺産を受け継いだハワード・ヒューズレオナルド・ディカプリオ)が最初に取り組んだのは映画「地獄の天使」の製作及び監督。本物の戦闘機を大量に買い付けた上、一度サイレントとして完成させた作品をトーキー用に撮り直ししたため製作費は膨れ上がる一方だったが、一度始めたら退くことを知らない彼は何とか公開に漕ぎ着ける。そんな彼が次に目を付けたのは航空機の開発だった…


大富豪ハワード・ヒューズの波瀾の半生を描いた伝記ドラマ。

個人的には、スコセッシ&ディカプリオのコンビが(やや露骨なまでに)アカデミー賞を狙いにいった作品としての印象が強く、その悲惨な結末(=11部門にノミネートされたものの、作品賞、監督賞及び主演男優賞のいずれも受賞出来ず。)を知ってしまうとちょっぴり可哀想すぎて見る気になれない。しかし、そんなディカプリオも昨年の「レヴェナント:蘇えりし者(2015年)」でようやく本懐を遂げたということで、晴れて解禁。

さて、そんな色眼鏡で見ていたせいか、最初からオーソン・ウェルズの大傑作「市民ケーン(1941年)」の影がチラついてしまってしょうがない。両方とも実在した大富豪が主人公(又はそのモデル)だし、傲慢で女癖は悪いし、冒頭の意味ありげな“QUARANTINE”は(意味は違えど)あの有名な“ROSEBUD”を連想させずにはおかない。

しかし、誠に遺憾ではあるが、今より10数歳若かった童顔のレオナルド・ディカプリオオーソン・ウェルズばりの怪演を期待するのは無理な話であり、正直、最初っから勝負にならない。脚本も、本作で描かれているハワード・ヒューズのような生き方を批判しているのか、賞賛しているのか、或いは擁護しようとしているのか、全く不明であり、そもそも30年近く前に亡くなっている人物を今取り上げようとした動機は何だったのだろう?

ということで、「地獄の天使(1930年)」には遠く及ばないにしろ、それなりの資金をつぎ込んで製作された映像は豪華で美しいし、オールド映画ファンの一人として、キャサリン・ヘプバーンケイト・ブランシェット)やエヴァ・ガードナージーン・ハーロウといった往年のスタア達が登場するストーリーはとても嬉しいのだが、結局、それらが何も生み出せなかった、っていうのが結論かなあ。ちなみに、ケイト・ブランシェットの演じたキャサリン・ヘプバーンはあまり似ていなかったと思います。