ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール

2014年
監督 スチュアート・マードック 出演 エミリー・ブラウニング、オリー・アレクサンデル
(あらすじ)
スコットランドグラスゴー。拒食症の治療のために入院しているイヴ(エミリー・ブラウニング)の唯一の楽しみは、ラジオから流れてくる音楽を楽しむこと。ある日、病院を抜け出して町のライヴハウスにやって来た彼女は、そこで出会ったギタリストのジェームズ(オリー・アレクサンダー)や彼の知人であるキャシーと意気投合し、彼ら一緒にオリジナルの音楽を作り出そうとするのだが…


ロックバンドのメンバーが脚本・監督を担当したという“青春ミュージカル映画”。

ラ・ラ・ランド(2016年)」や「グレイテスト・ショーマン(2017年)」の大ヒットにより第何次目かのミュージカル・ブーム到来と期待しているのだが、なかなか思うように新作が公開されずストレスは溜まる一方。仕方がないので何か未見の作品はないかと調べてみたところ、引っ掛かってきたのがこの作品であり、音楽がテーマだということ以外は全く予備知識無しの状態で鑑賞に臨む。

さて、内容は完全な青春映画であり、主人公イヴの主治医である中年女性を除くと、主要な登場人物は男も女も若者ばかり。おまけに彼女らのファッションから街並みに至るまで、映し出される映像はとにかくお洒落な感覚に溢れており、正直、還暦過ぎのオヤジが一人で見るのには少々気恥ずかしい気分が無きにしも非ず。

これで音楽がパンクロックか何かだったらそこに救いを求めるところだが、本作の主人公たちの求めている音楽はもっとポップで耳ざわりの良いものであり、やっぱりお洒落な感覚に満ち溢れている。まあ、決して嫌いという訳ではないが、そこは還暦過ぎのオヤジとは無縁の世界であり、主人公たちの“自分探しの旅”を暖かく見守るばかり。

結局、主人公のイヴがロンドンの音楽学校に入るため、ジェームズやキャシーを残したまま一人で故郷を後にするところで終るのだが、そんな音楽版「青春群像(1953年)」的な展開がいま一つ腑に落ちないのも、そのハードな結末が本作のお洒落な感覚と上手くマッチしないからなのかもしれない。

ということで、残念ながら満足度という点では低評価とならざるを得ないところだが、その責任はもっぱら当方にあり、20代くらいまでの人が見れば結構楽しめるんじゃなかろうか。一番悪いのは、中高年にも楽しめるようなミュージカル映画の新作を公開してくれないハリウッドであり、ベンジ・パセクとジャスティン・ポールのソングライター・チームは今頃何をしているのでしょうか。