ボー・ジェスト

1939年作品
監督 ウィリアム・A.ウェルマン 出演 ゲイリー・クーパーレイ・ミランド
(あらすじ)
孤児であったマイケル(ゲイリー・クーパー)、ディグビー、ジョン(レイ・ミランド)のジェスト3兄弟は、英国のブランドン卿夫人に引き取られ、いつしか立派な青年へと成長していた。そんなある日、家宝である「青い水」と呼ばれるサファイアが家族の中の何者かによって盗まれるという事件が発生し、翌朝、自分が盗んだという書置きを残してマイケルは姿を消してしまう….


引き続き、ウィリアム・A.ウェルマン監督の作品を鑑賞。

サハラ砂漠の中にあるフランス外人部隊の砦がアラブの大群に襲われたとの報せにより、急遽、隣の砦から救援部隊が駆け付ける。しかし、彼等が目にしたのは人気のない砦を戦死した兵士達が守っているという異様な光景であり、偵察のために送り込んだ兵士も謎の失踪を遂げてしまう・・・

こんなミステリアスなエピソードから本作は始まるんだけど、そこで提示された数々の謎はそのままにして、話しは15年前へと一気に逆戻り。ここからはジェスト3兄弟による兄弟愛を中心にストーリーが展開していく訳であるが、その過程でも正体不明のアラブ人が登場したり、「青い水」盗難事件が発生したりといった具合に、謎は深まるばかり。

そして、家出したマイケルの後を追うようにして、ジェスト3兄弟がフランスの外人部隊で再会することによって、謎の解明に向けた一歩が踏み出され、ラストの20分間くらいで全ての謎が見事に解明される。(といっても、この時点では主役のマイケルは既に死亡しているため、TVの2時間ドラマみたいに主人公の長ゼリフで謎解きが行われる訳ではない。)

まあ、ストーリーがあまりに上手く出来ているので、荒唐無稽というかリアリティに欠けるといった意見もあるとは思うが、お話し好きの俺にとっては十分許容の範囲内であり、ラストまでとても楽しく拝見させて頂いた。中でも、ディグビーが、冷酷な鬼軍曹のマーコフを犬扱いすることによってマイケルとの子供の頃の約束を果たすというエピソードは、なかなかの傑作。

ということで、本作は、監督兼プロデューサーのウィリアム・A.ウェルマンが一流のスターと豊富な資金を使って作品作りができた頃の作品であり、後年の作品と比べ、随所に余裕を感じ取ることが出来るのが何故かとても嬉しい。なお、“ボー・ジェスト”というのは「善き行い」という意味のフランス語であり、これに引っ掛けてマイケルは“ボー”という愛称で呼ばれていた訳です。