野いちご

1957年
監督 イングマール・ベルイマン 出演 ヴィクトル・シェストレム、イングリッド・チューリン
(あらすじ)
78歳の医師イーサク(ヴィクトル・シェストレム)は、長年の功績が認められてルンド大学から名誉博士号を授与されることになる。しかし、その式典の前夜、自らの死を予見するような悪夢にうなされた彼は、急遽、飛行機の予定をキャンセルし、車で式典の行われる会場へ向かうことにする。その旅には、ちょうどイーサクの家を訪れていた息子の妻マリアン(イングリッド・チューリン)が同行することになるのだが…


「処女の泉(1960年)」に並ぶイングマール・ベルイマンの代表作の一つ。

マリアンに言わせると、主人公であるイーサクの性格は“エゴイスト”であり、既に亡くなっている彼の妻との夫婦仲も決して円満なものではなかったらしい。そんな環境で育った一人息子のエヴァルドも“家庭”というものに絶望しており、困ったマリアンはイーサクに相談するために彼の家を訪れた訳であるが、彼の回答は“お前たちの問題で私を悩ませるな”。

まあ、そんなイーサクにも、若かりし頃、婚約者である従妹のサーラと過ごした野いちごのように甘酸っぱい思い出があるのだが、結局、真面目すぎる性格が災いして女たらしの弟に彼女をさらわれてしまう。おそらく、そんなふしだらな従妹の仕打ちも彼の人間嫌いな性格の一因になっているのだろう。

さて、本作は、そんな主人公の悔い多き人生をなぞるように進むロードムービーになっており、最初に登場する若い娘サーラ(=二人の青年と一緒に旅をしており、名前ばかりか、容姿もかつての従妹にそっくり!)は主人公の青春時代を、妻に冷淡な言葉を浴びせかける夫は主人公の夫婦生活を、そして最後に登場する主人公の老母は彼の今後の人生を表しているように思われる。

しかし、実際の人生と異なるのはそこに女神のように美しいマリアンが同行していることであり、彼女の的確なアドバイスにも助けられて、無事、かつての従妹サーラとの仲直りにも成功。実は、マリアンはエヴァルドの子を身籠もっており、おそらくこれからの主人公の人生はなかなか賑やかなものになるのではなかろうか。

ということで、エゴイストな老人に対する刑罰は“孤独”だそうであり、性格的にちょっと主人公に似たところのある俺にとってはなかなか耳に痛い話。公開当時、まだ50歳にも満たなかったベルイマンがこのようなテーマを取り上げたことについてはやや複雑な気持ちが残るが、同じく、公開当時31歳だったイングリッド・チューリンがとても美人だったので、まあ、大目に見ておきましょう。