ソウルフル・ワールド

2020年
監督 ピート・ドクター
(あらすじ)
非常勤の音楽教師をしているジョー・ガードナーは、未だジャズ・ミュージシャンになる夢を諦めきれないでいる中年男。ある日のこと、かつての教え子の紹介によって一流サックスプレイヤーのドロシアの前でピアノの腕前を披露するチャンスをつかんだ彼は、見事合格して彼女のグループに加わることが決定! 大喜びのジョーであったが、その直後、誤ってマンホールに墜落してしまい、“ソウルの世界”へ迷い込むことに…


「2分の1の魔法(2020年)」に続くピクサーの新作アニメ映画。

ご多分に漏れず、本作もコロナ禍の影響によって劇場公開が見送りになってしまい、今月25日からディズニープラス での配信が始まったところであるが、「ムーラン(2020年)」とは異なり、最初から追加料金なしで見られるのが有り難い。しかし、妻&娘の関心は低調のようであり、一人寂しくTVの前で鑑賞することになってしまった。

さて、“ソウルの世界”というのは、人間として生まれる前のソウル(魂)たちが暮らしている世界のことであり、彼らはそこで各々の個性を獲得してから人間世界へと旅立っていくらしい。その個性の一つが“スパーク(きらめき)”であり、ソウルたちは、ガンジーリンカーンマザーテレサといった偉大なメンターたちの辿った人生に感動することを通して、自分なりのスパークを発見するという仕組みになっている。

しかし、中にはなかなか自分のやりたいことが見つからないソウルも存在する訳であり、“こじらせソウル”の異名を持つ22番は、人間になることを拒んで“ソウルの世界”に何百年も居座り続けている問題児。ひょんなことから、そんな22番のメンターを務めることになったジョーは、22番のスパーク探しを手伝いながら現世への復活を目指すことになるのだが、その過程で明らかになっていく本作のテーマは“生きることの意味”。

結局、スパークが意味するのは“人生の目的”というような大それたものではなく、“何にときめきを感じるか”みたいなものであることが判明し、美味しいピザや色付いた落ち葉の美しさといったささやかな日常の中に喜びを見出していくことこそが“生きることの意味”なんだという結論にたどり着く。勿論、このシンプルな結論に何の異論もないのだが、その割りには設定が少しややこしかったかなあ、というのが偽らざる感想。

ということで、脚本・監督を務めているピート・ドクターは、以前「インサイド・ヘッド(2015年)」を手掛けた人物であり、こういった哲学的思考をそのままストレートにキャラクター化して表現するのがお得意のようである。しかし、その内容を本当に子供が理解できているのかと言えば、正直、大いに疑問であり、対象年齢が非常に限られる作品(=個人差はあるだろうが、だいたい10代半ばくらい?)になっているような気がします。