マッドマックス 怒りのデス・ロード

2015年作品
監督 ジョージ・ミラー 出演 トム・ハーディシャーリーズ・セロン
(あらすじ)
文明が崩壊し、砂漠化した荒野を車で疾走していた元警察官のマックス(トム・ハーディ)は、凶暴な独裁者であるイモータン・ジョーの部下たちに捕らえられ、業病に苦しむ彼等に健康な血液を供給するための生きた“輸血袋”にされてしまう。その頃、ジョーの片腕だった大隊長のフュリオサ(シャーリーズ・セロン)が、ジョーの5人の妻たちをウォー・タンクに乗せて脱走を図るという事件が発生し….


実に27年ぶりに製作された「マッドマックス」シリーズの第4作目。

正直、真面目な映画青年であった俺は「マッドマックス(1979年)」に始まる前3部作をまともに見た記憶は無いのだが、まあ、良くも悪くも今年を代表する話題作の一本であるこの作品を見ないまま年を越してしまうのも如何なものかということで、妻と一緒に恐る恐る見てみることにした次第。

さて、影響力の非常に大きかったシリーズの続編ということで、時代背景や主人公の脳裏にフラッシュバックのように蘇る映像に関する説明はほとんど省略されているのだが、見ていて特に理解に苦しむようなことが無いのは流石だなあ。囚われの身だったマックスが、フュリオサ等を追いかけるドライバーの輸血袋として追跡劇に参加するところから物語は大暴走を始める!

とはいっても、ストーリー自体は非常に単純であり、映像の9割くらいは、マックスやフュリオサ等の搭乗する“ウォー・タンク”(=トレーラータイプの大型改造車)と、イモータン・ジョー一味等の駆る奇妙な改造車との間で繰り広げられる壮大な追いかけっこの描写に占められている。

もちろん、一昔前の西部劇における駅馬車ネイティブ・アメリカンとの戦いを100倍くらいド派手にした映像は迫力満点ではあるのだが、そればかり見せられるのはやっぱり退屈。イモータン・ジョーの支配する社会における、人間の欲望を剥き出しにした奇妙な“役割分担”が物語の良い隠し味になってはいるのだが、直截的過ぎてちょっぴりヒネリが足りないようにも思えた。

ということで、イモータン・ジョーの説く来世を信じて命がけで彼に尽くそうとするウォーボーイズの悲哀が見る者の涙を誘う(?)のだが、現実世界における彼等の類例を探すのにわざわざイスラム国まで出向く必要は無く、我が国にも靖国神社という立派な前例があることをとりあえず指摘しておきたいと思います。