現金に手を出すな

1954年作品
監督 ジャック・ベッケル 出演 ジャン・ギャバン、ルネ・ダリー
(あらすじ)
初老の域にさしかかったマックス(ジャン・ギャバン)は、パリの暗黒街では誰からも一目置かれる存在。若い頃からの相棒であるリトン(ルネ・ダリー)と組んで強奪に成功した5千万フランの金塊を元手にして現役の引退を考えていたが、リトンが金塊のことを若い踊り子のジョジィに不用意に漏らしてしまったことから、彼等の周囲でにわかに不穏な動きが目立つようになる….


フランス製フィルム・ノワールの先駆的作品。

いち早く危険を察知したマックスは、リトンを連れてあらかじめ用意しておいた隠れ家に避難する。一方、自分の不用意な言動が原因でマックスに迷惑をかけたことを悔やむリトンは、マックスのいない隙を見計らって単身敵地へ乗り込むが、逆に捕らえられ、人質にされてしまう。

まあ、こういったリトンのドジなところは昔からのことらしく、その度にマックスが尻を拭わされてきた。しかし、今回、リトンと引換えに虎の子の金塊を敵に渡してしまえば、着々と準備を進めてきた美女との華麗なる引退生活も全てパーになってしまうということで、さすがのマックスも真剣に思い悩むのだが、結局、金塊とマシンガンを用意してリトンの救出に向かうことになる。

そんな“男の友情”がテーマの作品であるが、日本のヤクザ映画とは異なり、義理だ人情だと大騒ぎしないところが大変スマートであり、“まあ、仕方ないか”くらいの感覚で命を懸けるところがなかなかお洒落。やはりジャン・ギャバンが主演の「我等の仲間(1936年)」でもそうだったが、フランスにおける男の友情には相当子供っぽいところがあると思う。

また、本作には後の大物お二人の若き日のお姿が拝めるという特典も付いており、そのうちの一人がマックスから金塊の横取りを企む敵ボスのアンジェロに扮したリノ・ヴァンチュラ。出番は少ないものの、これが映画デビュー作とは思えない程の存在感はさすがであり、この後、短期間のうちにスターダムにのし上がることになる。

ということで、もう一人の大物は、リトンを裏切ってアンジェロに金塊の話を告げ口してしまうジョジィ役のジャンヌ・モローであり、公開当時26歳。怒ったマックスから、小娘のように平手打ちを食らう痛々しいシーンが印象的でした。