1986年作品
監督 岡本喜八 出演 古谷一行、財津一郎
(あらすじ)
リンカーンによって奴隷から開放された黒人のジョーたちは、メキシコ商人に騙され、故郷のアフリカへ帰るはずが、香港行きの船に乗せられてしまう。途中、嵐に乗じてボートで脱出を図った彼等は見知らぬ浜辺に漂着するが、そこは大政奉還が行われたばかりの日本の庵原藩であり、藩主の海郷亮勝(古谷一行)は、家老の石出九郎左ヱ門(財津一郎)の反対を押し切って彼等を助けることに….
筒井康隆の小説を岡本喜八の監督で映画化したスラップスティック・コメディ。
大政奉還は行われたものの、徳川慶喜はまだ大阪城に居座ったままという微妙なご時勢のため、小藩である庵原藩としては何かにつけ慎重に行動しなければならない状況。堅物の九郎左ヱ門は、そんなところへ転がり込んできた黒人3人組を闇から闇へ葬ってしまいたかったのだが、好奇心の強い亮勝は彼等を城の地下にある座敷牢に匿う。
そこで亮勝が出会ったのが、この3人組が奏でる“メイプル・リーフ・ラグ”であり、元々音楽好きだったところへ、何かと気苦労の多い藩主の職責から解放されたいという彼の逃避願望が相俟って、延々と続く狂乱の一大ジャズセッションへ突入。朝廷も徳川もどこへやら、至福の忘我状態のまま、映画は幕を閉じる。
原作となった筒井康隆の中編小説は、俺が彼の作品を片っ端から読んでいた時期よりも少しばかり後に発表されたため、残念ながら今もって未読のままなのだが、映画化されたこの作品の評判は色々なところで耳にしており、長年、見てみたいと思っていた。まあ、それなりの脚色はされているのだろうが、筒井作品ならではのドタバタ感はよく再現されていたように思う。
見どころは、いうまでもなくラストのジャズセッションであり、本作の音楽を担当している山下洋輔本人までがおもちゃのピアノで飛入り参加してお祭り騒ぎを繰り広げるのだが、正直、音楽的なレベルはそう高くなく、iPodに入れて持ち歩きたくなるような欲求は全く湧いてこなかった。
ということで、堅物の九郎左ヱ門も最後はセッションに加わるため、彼に扮する財津一郎がいつど派手なエンターティナーぶりを発揮してくれるのか、楽しみに待っていたのだが、残念ながら最後まで太鼓を叩いているだけ。華麗とはいかないまでも、タップダンスのまね事くらい披露して欲しかったところです。