モンスター

2003年作品
監督 パティ・ジェンキンス 出演 シャーリーズ・セロンクリスティナ・リッチ
(あらすじ)
フロリダ州で売春婦をしていたアイリーン(シャーリーズ・セロン)は、満たされない孤独な日々に嫌気がさして自殺を決意。死ぬ前に残った5ドルを使ってしまおうとあるゲイバーに入るが、そこで知り合った同性愛者の女性セルビー(クリスティナ・リッチ)と意気投合してしまい、彼女と二人で暮らすための金を稼ぐために再び売春婦として見ず知らずの男の車に乗り込むことに…


シャーリーズ・セロンアカデミー賞の主演女優賞に輝いた作品。

全米では、現在、ガル・ガドット主演の「ワンダーウーマン」が絶賛公開中なのだが、我が国での公開は8月25日の予定であり、もう遅すぎるったらありゃしない。仕方がないので同じパティ・ジェンキンス監督の旧作でも見てみようかと思って調べてみたところ、驚いたことに長編映画はこれ一作きりだった。

さて、本作の噂は以前から聞いてはいたのだが、あのお美しいシャーリーズ・セロンが13kgの体重増加と特殊メイクとで醜女のシリアルキラーを演じているという情報からでは、正直、鑑賞意欲はなかなか湧いてこない。おそらくこんな機会でもなければ一生見ることのなかった作品だと思うのだが、内容は想像したとおりの“痛ましさ”だった。

ベースになっているのはアイリーン・ウォーノスという実在の女性が1989年から1990年にかけて起こした連続殺人事件であり、先日拝見した「テルマ&ルイーズ(1991年)」も同じ事件をモチーフにしているらしいのだが、「テルマ〜」が依然として“男性からの救い”を前提としている(=それが足りなかったから悲劇は起きた。)のに対し、本作ではそんな男への淡い期待はとうの昔に捨て去られてしまっている。

おそらく、そのあたりは本作の監督・脚本を担当したのがパティ・ジェンキンスという女性だったことが深く関係しているのだろうが、容姿にも才能にも環境にも恵まれなかった主人公にとってアメリカ流の自由主義個人主義はさぞかし過酷なものだったに違いなく、見終わってからの後味の悪さは絶品(?)だった。

ということで、本作の後味を悪くしているもう一つの原因は(おそらく)主演のシャーリーズ・セロン。彼女の役作りは評価されてしかるべきなんだろうが、特殊メイクを落としてしばらくダイエットでもしていれば再び絶世の美女に生まれ変われる訳であり、今は亡きアイリーン・ウォーノスの人生との落差を考えると、正直、絶望的な気持ちになってしまいます。