1969年作品
監督 ジーン・ケリー 出演 バーブラ・ストライサンド、ウォルター・マッソー
(あらすじ)
19世紀後半のニューヨーク。夫と死別し、紹介・仲人業で生計を立てている未亡人のドーリー(バーブラ・ストライサンド)が密かに好意を抱いているのは、ケチで野暮天の独身中年男ホーレス(ウォルター・マッソー)。結婚生活の素晴らしさを言い聞かせ、ようやくその気にさせることに成功するのだが、そんなホーレスがプロポーズの相手に選んだのは美人の帽子屋アイリーンだった….
ジーン・ケリー監督、バーブラ・ストライサンド主演によるミュージカル映画。
楽しい要素がぎっしり詰まった作品であり、有名な主題歌をはじめとする挿入歌にも親しみやすいものが多く、映像もとても美しい。何度か登場する屋外でのダンス・シーンは本作の最大の見どころであり、観客にダンサーの“体重”を感じさせないような軽快でスピーディーなダンスは実に素晴らしい。
まあ、これだけで十分に標準作以上の評価は差し上げられるのだが、残念ながら傑作とまで言うことが出来ないのは、ストーリーと主人公ドーリーのキャラクター設定に問題があるからであり、手八丁口八丁というのは許せるにしても、その能力が主として自分の恋愛成就のために使われるというのでは、なかなか観客の共感は得られないだろう。
ドーリー&ホーレス以外にも、本作には若々しいカップルが何組か登場するのだから、むしろそちらの方の恋物語を前面に押し出し、それらを成就させるために主人公が奔走する(=勿論、そのドサクサに紛れてホーレスと結ばれるのは全然OK)というストーリーにしておいた方が良かったような気がする。
ところで、本作に対してそんな感想を抱いてしまうのには、もう一つ別の理由が考えられる訳であり、それは主演のバーブラ・ストライサンドに対する俺の苦手意識。公開当時27歳という年齢でこれだけの貫禄を表現できるのはとても凄いことなのだが、それがどうしても“可愛げの無さ”に繋がってしまうのが困ったところであり、舞台同様、キャロル・チャニング(=本作公開当時48歳)が演じてくれていたら違う感想になっていたのかもしれない。
ということで、これまでにバーブラの主演作を見たのは「追憶(1973年)」くらいのものなのだが、折角なのでこれを機会にバーブラ・コンプレックス(?)の解消に努力してみるつもり。まずは、彼女の映画デビュー作である「ファニー・ガール(1968年)」を見てみようと思います。