ブラックホーク・ダウン

2001年作品
監督 リドリー・スコット 出演 ジョシュ・ハートネットユアン・マクレガー
(あらすじ)
1993年、泥沼化する内戦を鎮圧させるためアメリカはソマリアへの派兵を決断。抵抗を続けるアディード政権の要人を捕らえる目的で、首都モガディシュへ約100名からなる特殊部隊を投入する。作戦は1時間足らずで終了する予定だったが、アディード派の民兵の反撃によりブラックホークが撃墜されてしまい、エヴァーズマン二等軍曹(ジョシュ・ハートネット)等はその救出に向かうことに….


勇気を振り絞り、リドリー・スコットのとても怖そうな戦争映画をようやく鑑賞。

145分という上映時間の9割以上が激しい戦闘シーンのために費やされているのだが、何と言っても、そのリアルな描写にまず驚かされる。モロッコで大規模なロケを行ったらしいのだが、広範囲にわたる戦闘シーンがドキュメンタリイさながらに再現されており、引きで撮影された映像を“本物”といって見せられても、ほとんどの人はそれを信用してしまうだろう。

実際に起きた“モガディシュの戦闘”をベースにしているそうであるが、この作戦の背後にある国際情勢等の説明は必要最低限に抑えられているため、それがどのような意味を持っているのか良く分からない。しかし、おそらく実際にこの作戦に参加した兵士たちも似たような状況だったのではないだろうか。

印象的だったのは、死者を含め、“誰も置き去りにしない”というアメリカ側のルールの徹底ぶり。極端な話、最初に墜落したブラックホークの乗組員の救助を最初から諦めてしまえば、あれほど大きな被害を出すこと無く作戦を終わらせることが出来た訳であるが、それにもかかわらず、死体の回収に全力を尽くしたのは、おそらく人道上の配慮というより、そうしなければ軍隊という組織が精神的に立ち行かないという現場の必要性に基づくものなのだろう。

まあ、実際にあのような戦闘の場に身を置いた兵士の方々の“勇気”には敬意を払うしか無い訳であるが、俺の目には一連の出来事は“悲劇”としてしか映ることは無く、鑑賞中、やっぱり何かが間違っているという思いが頭から離れることは一時も無かった。

ということで、地獄のような体験を終えたアメリカ軍の兵士たちが自分達の基地に戻って一息つくところで作品は終わるのだが、その後に表示される“米軍の死者19名に対して、ソマリア人の死者は約1,000人”という一文がとても衝撃的。これを見て、兵士たちに対する感情移入が一気にサッと覚めてしまうのも、リドリー・スコットによる的確な配慮なのでしょう。