ローン・サバイバー

2013年作品
監督 ピーター・バーグ 出演 マーク・ウォールバーグテイラー・キッチュ
(あらすじ)
2005年6月のアフガニスタンタリバンの幹部アフマド・シャーの殺害を目論むアメリカ海軍特殊部隊ネイビーシールズは、マイケル大尉(テイラー・キッチュ)やマーカス一等兵曹(マーク・ウォールバーグ)等4人の兵士から成る偵察チームを敵の潜む山岳地帯に送り込む。しかし、その直後、たまたま近くを通りかかった3人の山羊飼いと遭遇してしまい、やむなく彼等を拘束するのだが….


実際に行われた“レッド・ウィング作戦”の顛末を描いた作品。

実話に基づいているという点では、先日拝見したばかりの「ブラックホーク・ダウン(2001年)」と共通しているのだが、本作は、4人の中で唯一人奇跡の生還を果たしたマーカス・ラトレル一等兵曹の手記に基づいているということで、121分の上映時間のかなりの部分は彼の周囲で起きた出来事の描写に費やされている。

したがって、スケール感において「ブラックホーク・ダウン」より相当劣るのは仕方ないのだろうが、問題なのは、それを補うのに足りるだけの濃厚な人間ドラマが本作に存在しないこと。山岳地帯を逃げ惑いながら繰り広げられる200人以上のタリバン兵との死闘は、アクションとしてはなかなかの迫力ではあるもののドラマ性は希薄であり、見終わって心に残るものがあまり見当たらない。

まあ、これが実話物の弱点なのだろうが、拘束した3人の処遇をめぐる葛藤、すなわち、非戦闘員ということで交戦規則に則って解放するか、又はタリバンに通報される危険性を排除するために殺害するか、というあたりをもう少し掘り下げて描いてくれていれば、もう少しストーリーに深みが増したのかもしれない。

また、タリバン側からの視点が全くないという点では昔の西部劇に出てきた“インディアン”と同じであり、“タリバン”というレッテルを貼られてしまえば殺されるのは当たり前という雰囲気。西部劇とは違い、現在進行中の出来事を描いているのだから、もう少し相手側の主張に配慮する必要があっただろう。

ということで、「ローン・サバイバー」という題名から、敵地からたった一人で脱出する過程を描いた作品を想像していたのだが、実際は主人公が単独で行動するパートは極めて短く、タリバンに敵対する地元住民の援助を受けて無事救出される。主人公からナイフを要求された少年が、英語が分からないということで、何故かアヒルを持ってきたシーンが一番印象に残っています。