踊る海賊

1948年作品
監督 ヴィンセント・ミネリ 出演 ジュディ・ガーランドジーン・ケリー
(あらすじ)
19世紀、カリブ海の島に住むマニュエラ(ジュディ・ガーランド)は、今や伝説となった大海賊マココとの恋愛を夢見るロマンチックな娘。しかし、現実には、年の離れた市長のドン・ペドロに見染められ、彼との結婚式を数日後に控えていた。そんなある日、彼女は嫁入り道具を運んでくる船を見るために港へ行き、そこで旅芸人のセラフィン(ジーン・ケリー)と出会う….


ジュディ・ガーランド主演のミュージカル映画

その後、市長ドン・ペドロこそが伝説の大海賊マココその人であったことが明らかになり、自分の正体がバレることを恐れるペドロとそれを利用してマココになりすまそうとするセラフィン、それにマニュエラが加わった三角関係が中心になって物語は展開していく訳だが、これがミュージカル映画のストーリーとは思えないほど良く出来ており、とても面白い。

しかし、その反面、肝心の歌や踊りのシーンが少なくなってしまっているのが大変残念であり、これはミュージカル映画としては致命的な欠陥。まあ、名手ヴィンセント・ミネリともあろう人がそんな初歩的なミスを犯す筈はなく、上映時間(=102分)にもまだ十分余裕があることを考えれば、おそらく何か“別の事情”があったのだろう。

そして、その最たるものとして考えられるのが、(誠に残念ながら)ジュディ・ガーランドの“体調”。本作における彼女は、「サマー・ストック(1950年)」のときと同様、どこかイライラしているようで演技に余裕がなく、そのせいで、せっかくの面白いストーリーなのにもかかわらず、ほとんど笑えるところが無い。

唯一の例外がラストの「ビー・ア・クラウン」で、ストーリーとはほとんど関係のない取って付けたような内容なんだけど、この一曲だけは文句なしに素晴らしい。こんなダンスをもう2、3曲やってくれていたら、本作の評価も随分と違っていたのになあ。

ということで、同じ年に公開された「イースター・パレード(1948年)」がとても楽しい作品だったことを考えると、ついつい共演者の差なのかと思ってしまう訳だが、本当のところはどうだったんだろう。ジーン・ケリーが、デビューのきっかけを作ってくれたジュディにとても感謝していたという話は聞いたことがあるけれど、彼女のジーン・ケリー観も聞いてみたいところです。