大統領の陰謀

1976年作品
監督 アラン・J・パクラ 出演 ロバート・レッドフォードダスティン・ホフマン
(あらすじ)
1972年6月17日深夜。ワシントンのウォーターゲート・ビル5階にある民主党全国委員会本部に5人の男たちが忍び込み、不法侵入の現行犯で逮捕されるという事件が発生。ワシントン・ポスト紙の記者ボブ・ウッドワードロバート・レッドフォード)は、犯人の一人が元CIAの関係者であることに興味を抱き、同僚のカール・バーンスタインダスティン・ホフマン)とともにこの事件の取材に当たるが….


ウォーターゲート事件を扱った実話の映画化。

ドキュメンタリイ作品ではないんだけれど、事件が発覚してから4年、ニクソンが大統領を辞任してからはわずか2年しか経っていない時点での映画化ということで、ストーリーは実話に極めて忠実(だと思う)。当然、ニクソンやミッチェル司法長官、ハルデマン(=字幕では“ホールドマン”)首席補佐官といった当時の大物が俎上に上げられるものの、画面に映し出されるのは当時のニュース映像だけであり、実際に彼等に扮した俳優が画面に登場する訳ではない。

したがって、新聞記者のボブやカールが直接ニクソンに会って彼を問い詰めるようなシーンは出てこないし、謎の暗殺者集団相手に激しい銃撃戦を繰り広げるなんてこともない。ただ、事件の関係者に電話をかけたり、図書館で膨大な記録を調べたりといった彼等の地味〜な取材活動の様子が淡々と描かれている。

この内容で138分という決して短くはない上映時間を乗り切ったアラン・J・パクラ監督の手腕は大したものだと思うけど、まあ、それも非常に有名な実話の映画化という免罪符があったからなのかも知れず、仮にこれがフィクションであったなら少々盛り上がりに欠ける退屈な作品という評価もあり得たのではないだろうか。

配役としては、当時、人気絶頂であった主演二人のサポート役として、ジェーソン・ロバーツ&ジャック・ウォーデンという名脇役を配したのが大成功で、ドキュメンタリイ・タッチな作品の良い味付けとなっている。実はもう一人、マーティン・バルサムも出演しているんだけれど、他の二人と比べて見せ場がほとんど無かったのはどうしてなんだろう。

ということで、本作はウォーターゲート事件に関する予備知識があることを前提に作られているため、それがないと(例えば“ディープ・スロート”の存在について)見ていて理解に苦しむことがあるかもしれない。さて、次は、映画館で見逃したロン・ハワードの「フロスト×ニクソン(2008年)」を見てみようと思います。