夫(ハズ)は偽者

1951年作品
監督 ウォルター・ラング 出演 ダニー・ケイジーン・ティアニー
(あらすじ)
南仏リヴィエラのナイトクラブに出演中のジャク・マーティン(ダニー・ケイ)は、冒険飛行を成し遂げたばかりの英雄アンリ・デュラン(ダニー・ケイ2役)と自分が瓜二つなことに気付き、舞台で彼のものまねを披露して喝采を浴びる。そんなある日、アンリのアリバイ工作に協力することになったジャックは、アンリの別荘で開かれるパーティーに彼の妻リリ(ジーン・ティアニー)と一緒に出席することになるが….


ダニー・ケイが、「ダニー・ケイの天国と地獄(1945年)」に引き続き一人二役を披露するコメディ作品。

ジャクにはコレット(=「栄光何するものぞ(1952年)」でヒロインを演じていたコリンヌ・カルヴェ)という芸人仲間の恋人がいるし、一方のアンリにも美人妻のリリがいるのだが、アンリの方は相当のプレイボーイという設定であり、そのせいで夫婦仲はいま一つしっくりといっていない。

このような状況でジャクはアンリの代役を務めることになるのだが、パーティーの途中でアンリが急遽帰宅してきたことから話しはややこしくなる。どうやらリリはパーティの後でパートナーと仲良くベッドインしたらしいのだが、この行為に関しても「アンリだと思ってアンリと〜」、「ジャックだと思ってジャックと〜」、「アンリだと思って実はジャックと〜」、「ジャックだと思って実はアンリと〜」という4通りの解釈が可能になってしまうんだよね。

ダニー・ケイ主演作品の例に漏れず、本作でも芸人に扮した彼の多芸多才ぶりが随所に発揮されている訳であるが、それでも初期の作品に比較すれば随分と控えめであり、その分、ストーリーが重視される作品になっている。監督がウォルター・ラングのため、前記のような面白い設定が十分に生かされているとは言い難く、また、折角起用したジーン・ティアニーの魅力もいま一つ伝わってこないのだが、まあ、そこそこ楽しめるコメディには仕上がっていると思う。

ということで、本作を見て一番驚いたのは、アンリに扮したときのダニー・ケイが本当にカッコいいこと。一人二役というのは彼のような芸達者な俳優にとっては珍しくもないのだが、本作におけるジャクとアンリの演じ分けは実に見事であり、(当然)外見はまるっきり一緒なのにもかかわらず、見ているうちに別々の俳優が演じている様な気になってしまいました。