チャッピー

2015年作品
監督 ニール・ブロムカンプ 出演 デヴ・パテル、ヒュー・ジャックマン
(あらすじ)
2016年、南アフリカヨハネスブルグ。ディオン(デヴ・パテル)はテトラバール社の有能なエンジニアであり、彼の設計した警察用ロボットは市から大量の発注を受け、治安の維持に大きく貢献していた。そんなある日、密かに人口知能の開発に取り組んでいた彼は、スクラップ寸前の1台の警察用ロボットを会社から盗み出し、それに人工知能のソフトをインストールしようとするが…


ちょっと奇妙な味のするSF作品を撮り続けているニール・ブロムカンプ監督の新作。

正直、評価の高かった「第9地区(2009年)」も、そうでなかった「エリジウム(2013年)」も、個人的な満足度自体は決してそう高い作品ではないのだが、その常人とは相当異なる“感性”の魅力にはなかなか抗い難いものがあり、まあ、期待半分といった心持ちで鑑賞スタート。

おそらく、こちらがハリウッド製の“キチンとした”SF映画に毒されているせいもあるのだろうが、史上初となる人口知能を備えたロボット“チャッピー”の誕生に至るまでのストーリーは一言で言うと陳腐であり、見ていてSF的な興奮を覚えるような映像やエピソードはほとんど登場しない。

まあ、この脱力感がブロムカンプ監督の持ち味であることを考えれば、天才的なロボット工学者のディオンをはじめとする登場人物がボンクラ揃いであることも含めて許容可能なのだが、本作の致命的な欠陥は、満を持して登場する主役のチャッピーがあまりに人間的であるところ。

さすがに“生まれたばかり”ということで、経験だけは決定的に不足しているものの、知能や感情の面ではほとんど人間と変わらないし、動作のスムーズな点ではスター・ウォーズに登場するC-3PO以上。これでは新鮮味は全く感じないし、人工知能をテーマにした哲学マンガにもならないではないか!

ということで、“やっぱりなあ”とちょっぴり後悔しながら見続けていると、終盤、ストーリーは予想外の方向へと進んでいき、何とも複雑な気持ちの入り混じった微妙なハッピーエンドを迎えることに。まあ、このへんがブロムカンプ監督らしいところなんだろうが、個人的にはそこから先のストーリーの方が気になってしまいました。