ムーラン

2020年
監督 ニキ・カーロ 出演 リウ・イーフェイコン・リー
(あらすじ)
北方民族による脅威が絶えない古代中国。魔女シェンニャン(コン・リー)の力を借りたボーリー・カーンの度重なる侵略行為に業を煮やした皇帝は、討伐軍を組織するために国中の家から男子一名を徴兵するよう命令を出す。しかし、ファ家には息子がおらず、足の悪い父親を戦場に行かせる訳にはいかないと考えた長女のムーラン(リウ・イーフェイ)は、家族には何も告げず、男子と偽って戦地へ赴くことを決意する…


長編アニメ映画「ムーラン(1998年)」を実写化によりリメイクした作品。

公開前のゴタゴタとコロナ禍の影響を受けて、結局、劇場公開が見送りになってしまった“問題作”だが、ようやくディズニープラスでの有料配信が終了し、昨日から定額料金だけで見られるようになった。ミュージカル要素は全カットという酷い扱いの故、視聴意欲は決して高くなかったが、まあ、タダなら仕方ないかと思って家族と一緒に鑑賞。

さて、本作を単なる娯楽映画として評価するなら、それはもう紛れもない失敗作であり、それこそが劇場公開が見送りになった本当の理由なのかもしれない。正直、アクションシーンは凡庸なものばかりであり、CG映像の陳腐さは目も蔽わんばかり。中盤の見せ場になるはずの雪崩シーンの迫力や躍動感が、20年以上前のアニメ版より劣っているのは情けないったらありゃしない。

マーベル映画を傘下に収めているディズニーが、なんでこんな下手くそな監督を起用したのかと思って調べてみたら、このニキ・カーロという監督さん、「クジラの島の少女(2002年)」や「スタンドアップ(2005年)」といった男性社会の中で苦悩する女性を主人公にした作品で注目を集めた方のようであり、そういえば「クジラの島の少女」の方は昔見た覚えがある。

そう思って本ブログの過去記事を探してみたところ、そのスートーリーは“期待ハズレとして生れてきた少女がある生来の特殊能力を発揮することによって家族に受け入れられる”という内容であり、それに対するブログの感想は“できれば超自然的なパワーは無しの方向で最後までいって欲しかった”。

ということで、この感想は「ムーラン」にも当てはまるものであり、正直、“気”の力によって主人公が周囲に受け入れられたとしても、そんな特殊能力を有さない女性や弱者たちにとっては何の意味も持たないだろう。新キャラである魔女シェンニャンの起用にはちょっぴり興味を惹かれたものの、結局、その存在意義が十分観客に理解されないまま終わってしまったのは悔やまれるところです。