1977年作品
監督 ロバート・アルトマン 出演 シェリー・デュヴァル、シシー・スペイセク
(あらすじ)
テキサス出身のピンキー(シシー・スペイシク)は、カリフォルニアのパーム・スプリングスにある老人リハビリセンターで働くことになり、そこで彼女に仕事の段取りを教えてくれた有能そうな先輩のミリー(シェリー・デュヴァル)に好印象を抱く。そんなとき、ミリーがルームメイトを募集していることを知った彼女は運よくその後釜に納まることが出来、憧れのミリーと同居生活を始めることになる….
ロバート・アルトマンが「クィンテット(1977年)」と同じ年に発表したホラー映画。
まあ、ホラーといってもあくまでアルトマン流のそれであり、ゾンビや殺人狂の類は一切出てこない。物語の舞台になるのも、一応、陽の光溢れるカリフォルニアではあるのだが、砂漠地帯にあるパーム・スプリングスの周辺は、ホラー映画の定番である“アメリカ中西部の田舎町”的な殺伐とした雰囲気が色濃く、ミリー等の行きつけの飲み屋兼アミューズメントパークである“ドッジ・シティ”にいたっては正に中西部そのもの。
そんな雰囲気の中、まず観客の背筋をゾッとさせるのは「キャリー(1976年)」でお馴染みのシシー・スペイセク扮する田舎娘のピンキーであり、少女のような容姿を持ち、その衝動的な振舞いやだらしのなさも十分に子どもっぽいのだが、それらを不気味にしか感じられないのはいったい何故なんだろう。中盤では、トマトケチャップ(?)によるスプラッター・シーンもしっかり見せてくれている。
そして、そんな彼女に輪をかけて怖いのが、シェリー・デュヴァル扮する有能そうなミリー。容姿は人並み以上であり、第一印象は決して悪くないのだが、中身が空っぽであるため、彼女を知る人は誰もまともに相手にしない。周囲の人から無視されているにもかかわらず、つまらない話をずっとし続ける彼女の姿からは、哀れさを通り越して、恐怖感しか伝わってこなかった。
ということで、本作の恐怖が頂点に達するのは、三人目の女ウィリーの出産にミリーが一人で立ち会うシーンであり、死んで動かない赤子を取上げることになったミリーが、そのときに浴びた出血で本作二度目のスプラッター。キューブリックは、このシーンを見てシェリー・デュヴァルを「シャイニング(1980年)」に起用しようと決めたのではないだろうか。不安を煽るような音楽もとても効果的でした。