1971年作品
監督 ニコラス・ローグ 出演 ジェニー・アガター、リュシアン・ジョン
(あらすじ)
父親に連れられて砂漠へピクニックにやってきた14歳の姉(ジェニー・アガター)と6歳の弟(リュシアン・ジョン)。しかし、父親はここで無理心中をしようと考えていたらしく、逃げ出した子どもたちを砂漠の真ん中に残したまま、自殺してしまう。気丈な姉は、幼い弟を励ましながら、方角も分からないまま砂漠を歩き続けるが、飢えと渇きで疲れ果てた彼等の前に一人の原住民の少年が現われる….
ニコラス・ローグが「赤い影(1973年)」の2年前に発表した初単独監督作品。
オーストラリアの原住民の間には、16歳になった男子が一年間独力で砂漠で生きていかなければならない“WALKABOUT”(=放浪)という通過儀礼があるらしく、瀕死の姉弟が出会った英語を理解しない少年も正にその真っ最中。この“WALKABOUT”というのが、本作の原題にもなっている。
この作品の面白いところは、ストーリーの部分部分によって作品の印象が大きく変化するところであり、父親が自分の幼い息子に向かっていきなり銃をぶっ放すというバイオレンスと不条理感に溢れた導入部分から、姉弟二人による過酷なサバイバル生活の描写を経て、原住民の少年が加わった、まあ、どちらかというと気ままで楽しい“WALKABOUT”の様子が描かれる。
そして、その結末には、一人前の“男”になった原住民の少年による、14歳の少女に対する求愛行動が待っており、そのエネルギッシュで呪術的な雰囲気は文句なしに素晴らしい。緊張の一夜が過ぎた翌朝のシラけたような雰囲気との対比もとても良かったと思う。
興味深いのは、少年の奇妙な求愛行動の意味するところが、観客のみならず、あの少女にも直感的に理解できたであろうという点であり、あの行動には何か普遍的なパワーのようなものが秘められているのかもしれない。そして、初めての求愛行動を最後まで立派にやり遂げ、燃え尽きて白い灰になった少年は天晴であり、正に“男”だったと思う。
ということで、これでニコラス・ローグの監督作品を見たのは三作目になる訳であるが、文句なしに本作が一番面白い。ちょっと気になったのは、途中、少女が全裸で泳ぐシーンが出てくるところであり、とても美しい映像なのだが、これもチャイルド・ポルノということになってしまうのでしょうか。