普通の人々

1980年作品
監督 ロバート・レッドフォード 出演 ティモシー・ハットンドナルド・サザーランド
(あらすじ)
高校生のコンラッド・ジャレット(ティモシー・ハットン)は、弁護士の父カルビン(ドナルド・サザーランド)と母ベスの三人暮らし。数年前のボート事故によって長男バックを失って以来、幸福だったジャレット家の暮らしに微妙な変化が生じており、コンラッド自身、自殺未遂を起こして入院していた精神病院を4ヶ月前に退院したばかり。父の勧めで精神分析医のもとに通院することになったが….


ロバート・レッドフォードの初監督作品であり、第53回アカデミー賞で作品賞と監督賞に輝いた。

事故が起きたとき、ボートにはコンラッドも同乗しており、まあ、望まれていた方(=長男)が死んでしまい、あまり望まれていなかった方(=次男)が生き残ったという訳。このパターンはいろんな作品で取り上げられていると思うのだが、本作がその先駆け的な作品なのかどうかはよく分からない。

おそらく、コンラッドが自殺未遂を起こしたのは両親の関心を引きたかったからなのだろうが、世間体を気にするベスにとってみれば、それは完全な裏切り行為。彼女はコンラッドに対し、息子としての愛情を注ぐことを完全に諦めてしまい、それを不当と考えるカルビンとの夫婦仲までおかしくなってしまう。

まあ、可愛らしいガールフレンドの出来たコンラッドがカルビンと和解する一方、ベス一人が家を出て行ってしまうというラストは、彼女ばかりが悪者にされているようでちょっと可哀想なのだが、これは男親とか女親とかの問題ではなく、家族のためであっても自分の価値観を変えようとしない頑なな彼女自身が招いた結論なのだと思う。

本作が本格的な映画デビューとなったコンラッド役のティモシー・ハットンは、ここでの演技によりアカデミー賞の(主演ではなく)助演男優賞を獲得しているのだが、出演時間を比べてみても本作の主演が彼であることは間違いないところであり、おそらく賞の取りやすさを考慮して、助演男優賞の方にエントリーしたのだろう。

ということで、全くの偶然なのだが、ここのところ「1900年(1976年)」、「赤い影(1973年)」それに本作と、ドナルド・サザーランドの出演作品を立て続けに拝見させて頂いた。「M★A★S★H マッシュ(1970年)」での印象が強烈なため、彼に対しては“変人”というイメージを抱いていたのだが、本作では少々気弱だが誠実な父親を巧みに演じており、なかなか達者な俳優さんだということが良く分かりました。