どら平太

2000年
監督 市川崑 出演 役所広司浅野ゆう子
(あらすじ)
 江戸詰めの主君から町奉行を仰せつかった望月小平太(役所広司)の目的は、“堀外”と呼ばれる藩内の無法地帯の大掃除。そこは大河岸の灘八、巴の多十、継町の才兵衛という3人の親分によって支配されており、禁制品の抜け荷をはじめとするあらゆる悪事が行われていたが、そこから得られる莫大な上納金に目が眩んでしまった藩の上層部は、彼らの悪事を黙って見逃していた…


黒澤明木下恵介市川崑小林正樹の共同脚本による痛快新時代劇エンタテインメント。

コロナ予防のため外出もままならず、ヒマだけは十分にあるのだが、小心者の故か、何処か心が落ち着かず、ゆっくり本を読んだり、映画を見たりする気になれないのが困りもの。そんな訳で、庭の草むしりをしたり、娘のNintendo Switchで「あつまれ どうぶつの森」をしたりしてヒマを潰しているのだが、そんなことではイカンと手に取ったのがこの作品。

最初は前記4人によって結成された「四騎の会」の第一回作品として企画され、お蔵入りになった後、市川の監督でオリジナル脚本を大幅に変更して公開されたといういわくのある作品であり、公開当時、ちょっと興味をそそられたものの、確か評判はそれほど高くなかったハズであり、もっぱら洋画ファンだった俺も長らく未見のまま放置しておいた。

さて、そんな訳で劇場公開から20年後の初観賞になったのだが、正直、期待していた脚本は緩すぎてまったく締まりがない。黒澤の用心棒シリーズに“遠山の金さん”を加味したような設定は悪くないのだが、それがまったく活かされていないのは何故なんだろう。例えば、主人公には安川(片岡鶴太郎)と仙波(宇崎竜童)という友人がおり、そのどちらかが事件の黒幕らしいのだが、まあ、配役をみればどちらが裏切り者かは容易に推測できてしまう。

しかし、20年寝かせておいた効果か、はたまたコロナ禍の心理的影響かは不明だが、このゆる~い作品が今の俺には心地よく感じられたのも意外な事実。特に撮影、照明、美術といった脚本とはあまり関係ない要素を堪能することが出来たのは望外の喜びであり、TVドラマと区別がつかないような昨今の邦画作品とは、正直、雲泥の差があるね。

ということで、本作が制作されたのはバブル崩壊からかなりの時間が経っていた時期のハズだが、その頃と比べても現状がさらに貧しくなっている事実を再認識。この痛手から立ち直るためにはおそらく数十年単位の時間を要するだろうが、過ちを改めるのに躊躇う必要はなく、今回のコロナ禍から得られるであろう様々な反省や教訓がそのきっかけになることを願っています。