ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密

今日は、妻&娘と一緒にライアン・ジョンソン監督の「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」を見てきた。

ずっと気になっている「パラサイト 半地下の家族」と「ジョジョ・ラビット」はまだ上映中なのだが、娘のお気に入りであるライアン・ジョンソン監督の新作とあっては見逃すわけにはいかない。ほとんど宣伝らしい宣伝はされていないものの、アカデミー脚本賞にノミネートされているくらいなので、きっと面白い作品に違いないと期待しながら映画館へ。

さて、ストーリーは、ベストセラー作家ハーラン・スロンビーの突然の死にまつわるミステリイであり、当初、地元警察はハーランの自殺と判断したものの、正体不明の人物から事件の調査を依頼された私立探偵のブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)は、ハーランの莫大な遺産をめぐる殺人事件ではないかとの疑いを抱く…

実は、かなり早い時点で事件の“真相”は明らかになってしまい、それは献身的でチャーミングな付添い看護師マルタ(アナ・デ・アルマス)の医療ミス(=別の薬と間違って大量のモルヒネをハーランに注射してしまった!)が露見することを防ぐため、モルヒネの過剰摂取で死ぬ前にハーランが自らの喉をナイフで切り裂いて自殺に見せかけたというもの。

ウルグアイから移民してきたマルタは不法滞在の疑いがある母親と同居しており、マルタが業務上過失致死の罪で逮捕されてしまうと母親は本国に強制送還され、家族がバラバラになってしまう可能性が高い。咄嗟にそう考えたハーランは“どうせ死ぬなら”ということで自殺を選択した訳であるが、実は彼にはそうせざるを得ないもう一つの秘密の理由があった!

そんな訳で、事件の真犯人はその“秘密の理由”をあらかじめ知っていた人物ということになり、マルタは業務上過失致死罪に問われることもなく最上のハッピーエンド。彼女は嘘をつくと吐いてしまうという誠実この上ないキャラクターであり、彼女の無罪放免は観客が一番望んでいた結末だったと思う。

また、面白かったのは、移民の問題を上手くミステリイに取り込んでいるところであり、ハーランが一代で築き上げた財産の上にあぐらをかいている彼の親族の姿は、移民の子孫でありながら新たな移民の受入れに反対している今の一部のアメリカ国民にそっくり。そんな親族からの“先祖代々受け継いできた屋敷を…”という抗議を、ブランが“この屋敷は80年代にハーランがパキスタン人から買ったものだ”と言って笑い飛ばすところがとても痛快だった。

ということで、小説にしても十分読み応えのあるくらい良く出来たシナリオであり、家族揃って大満足。ちなみにエンディングに使われていた「Sweet Virginia」は、ローリング・ストーンズが1972年に発表した名盤「Exile on Main St.」に収められていた比較的地味目な曲であり、こういった曲を1973年生まれのライアン・ジョンソンが使ってくれるのは望外の喜び。レストランのBGMに流れていた「Sundown」も、ゴードン・ライトフットが1974年に発表した懐メロです。