パラサイト 半地下の家族

今日は、妻&娘と一緒に今年のアカデミー作品賞に輝いた「パラサイト 半地下の家族」を見てきた。

正直、韓国映画はそのドロ臭さが少々苦手であり、本作も“まあ、DVDで見れば良いか”と思って油断していたのだが、そこへ飛び込んできたのがアカデミー賞4部門獲得の大ニュース! 何でも、非英語作品が作品賞を受賞するのは史上初めての快挙だそうであり、我が身の不明を恥じながら慌てて映画館へ向かう。

さて、ストーリーは、“半地下”という劣悪な住環境の下で暮らしている4人家族の物語であり、深刻な経済格差を反映して彼ら全員が失業中。そんなところへ転がり込んできたのが女子高生の家庭教師をやらないかという長男ギウの友人からの勧誘であり、妹ギジョンに偽造させた名門大学の入学証書の効果もあってか、見事、ギウは高級住宅地に住むパク家の家庭教師に採用される。

そこで彼が気付いたのは“金持ちは善人である”という事実であり、パク家の人々の人の好さにつけこんで、妹は美術教師、父は運転手、母は家政婦といった具合に家族全員が身分を偽ってパク家の使用人として雇ってもらうことに成功。これが題名の「パラサイト=寄生」の由来になる訳だが、ある夜、鳴り響くインターホンの音とともにドラマはトンデモナイ方向へと急展開!

まあ、映像は洗練されており、いつものドロ臭い喜劇的演出も控え目ということで安心して見ていられるのだが、正直、前半を見終えた時点では“何でこれが作品賞?”っていう疑問が頭から離れない。ところが、地下室→大雨とストーリーが進むに連れて事態は地獄の様相を呈して行き、最後は絶望感に包まれながらの静かなエンディング。すごいモノを見せられたというのが偽らざる感想であり、作品賞、監督賞、脚本賞を独占したのも十分納得できる。

韓国では、1997年の通貨危機に際し、IMFから新自由主義的施策を押し付けられた結果、我が国を上回るスピードで格差社会が進んでいるという話は聞いてはいたが、本作で描かれている半地下の家族の姿は、今や我が国を含む世界中で見られるようになった悲劇であり、そのことが本作をアカデミー賞の国際長編映画賞にとどまらず、作品賞にまで押し上げた理由の一つになっているのだろう。

ということで、過去1年間に見た作品の中にも「万引き家族(2018年)」、「わたしは、ダニエル・ブレイク(2016年)」、「ジョーカー(2019年)」といったように“貧困”をテーマにした作品が増えているのは紛れもない事実。頭部の損傷により笑いをコントロールできなくなったギウが韓国版ジョーカーになってしまう可能性は大であり、2人目、3人目のジョーカーを生み出す前に新自由主義という「悪魔のひき臼」を何とかしなければなりません。