アメリカ交響楽

1945年
監督 アーヴィング・ラパー 出演 ロバート・アルダ、ジョーン・レスリー
(あらすじ)
ある日、決して裕福とはいえないガーシュウィン家に一台のピアノが届けられ、日頃、行きつけの店の自動ピアノで遊んでいたジョージ(ロバート・アルダ)はいとも簡単にそれを弾きこなしてみせる。その後、フランク教授の指導によりショージのピアノの腕前はメキメキ上達するが、彼が本当に興味を持っていたのは作曲であり、アル・ジョルスンに提供した“スワニー”の大ヒットで一躍注目を浴びることに…


アメリカを代表する作曲家ジョージ・ガーシュウィンの伝記映画。

ガーシュウィンが生まれたのは1898年9月26日であり、1899年生まれのフレッド・アステアとは何と1つしか歳が違わない。しかし、わずか38歳で早世しているため、亡くなったのは1937年7月11日のことであり、その8年後に本作が公開されたことになる。

そのため、彼の友人だったというオスカー・レヴァントは勿論のこと、“スワニー”を歌うアル・ジョルスンや“ラプソディ・イン・ブルー”の初演を指揮するポール・ホワイトマンなどがいずれも本人役で出演しているのがとても面白く、彼らが実際に動いている姿を拝めるだけでも、本作には一見の価値があるだろう。

正直、ストーリーは単調であり、ガーシュウィンが大作曲家への階段を足早に駆け上っていく様子と、その過程で出会った二人の女性との恋愛話が描かれているだけ。その二つの恋はいずれも実を結ぶことなく破れてしまうのだが、見ていてその原因が良く分からないところが不満であり、ひょっとすると彼の性格上の欠点を描くのを遠慮してしまったのかもしれないね。

ちなみに個人的に面白かったのは、ガーシュインと黒人音楽との関係であり、欧州におけるクラシック音楽の伝統に対抗するために彼が取り入れたのは、ブルースやジャズといった黒人をルーツに持つ音楽。しかし、そんな彼の曲を歌っているのは、米国では顔を黒塗りにした白人男性であるのに対し、フランスでは知的な黒人女性(ヘイゼル・スコット)であり、う~ん、当時の米国民はこのシーンをどんな気持で見ていたのだろう。

ということで、学校の音楽の教科書に載っていた“ラプソディ・イン・ブルー”と、ジュディ・ガーランドの歌う“I Got Rhythm”とが頭の中で繋がらず、ずっと困っていたのだが、本作を見てようやく納得がいったような気がする。ところで、今の教科書にはいったいどんな音楽家の名前が載っているのでしょうか。