ストーミー・ウェザー

1943年作品
監督 アンドリュー・L.ストーン 出演 ビル・ロビンソン、レナ・ホーン
(あらすじ)
1917年、ヨーロッパ戦線から帰国したビル・ウィリアムソン二等兵ビル・ロビンソン)は、ナイトクラブで知り合った美人歌手のセリーナ(レナ・ホーン)からダンサーとしての才能を指摘される。その後、メンフィスで再会したセリーナの推薦によりシカゴで行われるショーに出演させてもらえることになるが、なかなか思うような出番は与えてもらえず、一計を案じたビルは…


“ミスター・ボージャングル”ことビル・ロビンソンが主演を務めたミュージカル作品。

allcinemaの解説によると、第二次世界大戦に出征した黒人兵の慰問のために制作された作品だそうであり、ビル・ロビンソン以外のキャストもすべて黒人によって占められている。まあ、時代を考えれば、そんなことでもない限り彼にハリウッド映画の主役を務める機会は回ってこなかった筈であり、(ちょっと複雑な思いは残るが)今となってはとても貴重な作品といえるのだろう。

さて、一応、“ボーイ・ミーツ・ガール・ストーリー”の体裁はとっているものの、公開当時65歳というビル・ロビンソンにロマンチックな役どころを求めるのは無理な話であり、ビルとセリーナの恋物語はほんの付け足し程度。それに代わって大々的に取り上げられているのが多くの黒人ミュージシャン&ダンサーたちによる歌と踊りであり、その素晴らしさは今見ても十分に伝わってくる。

ヒロインを務めるレナ・ホーンは公開当時26歳という若々しさであるが、終盤、自身の代表作でもあるタイトル曲を歌うシーンでの彼女は既に貫禄十分。先日、「模倣の人生(1934年)」を見たばかりということで、彼女の(明らかに周囲の黒人女性とは異なる)美貌を賞賛することには(またまた)少々複雑な思いはあるが、正直、とても魅力的だった。

また、ファッツ・ウォーラーキャブ・キャロウェイといった大物たちがそれぞれユニークなパフォーマンスを披露する一方で、「カサブランカ(1942年)」にも出演していたドゥーリイ・ウィルソンはコメディリリーフを一手に引き受けているのだが、まあ、これだけの大スターが顔を揃えてしまっては彼の渋いノドを披露する機会はなかったのだろう。

ということで、全盛期を過ぎてしまったビル・ロビンソンもドラム上でのタップダンス等、随所で達者なステップを見せてくれるのだが、やや時代遅れとも思える彼のダンスに比べニコラス・ブラザーズのスピーディーなダンスはまさに圧巻。大好きなコッポラの「コットンクラブ(1984年)」の原点を堪能することが出来ました。