ブラック・クランズマン

今日は、妻&娘と一緒にスパイク・リー監督の「ブラック・クランズマン」を見てきた。

今週末に封切られる作品の中では「バンブルビー」と本作の二択であり、マイケル・ベイの関与の比較的薄そうな前者にもちょっぴり興味はあったものの、娘の出した結論は後者。スパイク・リーの作品を拝見するのは随分久しぶりだが、今年のアカデミー賞で脚色賞を獲得した作品であり、どんな内容なのかしらとワクワク気分で映画館へ。

さて、ストーリーは、1970年代前半、コロラドスプリングス警察署初の黒人警官となったロン・ストールワースが、過激な白人至上主義で知られる秘密結社KKKに入会し、潜入捜査を行うという内容であり、1978年に起きた“実話”がベースになっている。原題は「BlacKkKlansman」であり、“k”を一つ余計にくっつけて“KkK”にしたんだね。

勿論、黒人のロンがKKKのメンバーと直接会う訳にはいかないため、彼の担当は電話のみであり、実際の接触ユダヤ人のフリップ・ジマーマンが身代わりになって行う。当初、あまり乗り気ではなかった彼が、KKKユダヤ人差別を知ることによって改めてユダヤ人としての自覚に目覚め、積極的に捜査に取り組むようになるという展開はなかなか面白い。

最後は、恋人のパトリスをKKKのメンバーによる爆殺計画から守り、ほとんどハッピーエンドの状態(=警官であることがバレてしまったため、結局、パトリスとは上手くいかなかったらしい。)でラストを迎えるかと思いきや、それに引き続いて映し出されるのは2017年に起きたシャーロッツビルでの悲劇の映像。う~ん、何十年たっても事態は一向に改善されていないんだねえ。

年齢と共に老獪さを増したスパイク・リーの演出は緩急自在であり、コメディみたいなゆる~い雰囲気の中から白人至上主義の狂気が徐々にその姿を現してくる様子は見ていてとても恐ろしい。ラストに映る上下逆さまになった星条旗の映像は、彼の怒りが「ドゥ・ザ・ライト・シング(1989年)」の頃から全く変わっていないことを如実に物語っているのだろう。

また、フリップ役を務めたアダム・ドライヴァーの演技はそんなリー監督の奔放な演出にピッタリであり、真面目なのか不真面目なのか、やる気があるのか無いのかハッキリしないまま、危険な潜入捜査にのめり込んでいく。ユダヤ人であること以外、ほとんど自分のことを話さないので最後まで正体は不明だが、非常に興味深いキャラクターであった。

ということで、同じアカデミー作品賞を争った「グリーンブック(2018年)」とは、ある意味、好対照な方向性を有する作品であり、その違いはキング牧師マルコムXとの意見の相違にも通じているのだろう。また、両作品とも主役より脇役の方が光っていたのが興味深いところであり、そんなところに差別問題ならではの特色が隠されているのかも知れません。