クイズ・ショウ

1994年作品
監督 ロバート・レッドフォード 出演 レイフ・ファインズ、ロブ・モロー
(あらすじ)
1950年代のアメリカでは、TVのクイズ番組“21(トゥエンティ・ワン)”が大人気。しかし、連勝を続けるユダヤ系のハービー・ステンペル(ジョン・タトゥーロ)の人気に陰りが見えてきたことから、スポンサーの意向を受けた番組プロデューサーのダンはコロンビア大学の講師チャールズ・ヴァン・ドーレン(レイフ・ファインズ)を後釜に据えることを思い付き、ハービーにわざと回答を間違えるよう指示する….


実際にあったというTVの人気クイズ番組“21”をめぐるやらせ問題の映画化。

チャールズは身内にピューリツァー賞の受賞者もいるという上流階級の出身であり、一度は“クイズの回答を教えてくれる”というダンからの誘惑を断るものの、ハービーとの対戦で、番組のオーディションのときに一度出題された問題が再び出題されると、迷った末に“正解”を答えてしまい、以後チャールズはやらせの片棒を担ぐことになる。

まあ、今から50年も前の話であり、演出という名目で日常的に行われているTVのやらせや印象操作に慣れっこになってしまっている我々には、正直、さしてショッキングな設定とは言えないのだが、チャールズ、ハービーそれにTV界の不正を暴こうとする政府の若き調査官ディック・グッドウィンの3人を主役にした人間ドラマはなかなか見応えがある。

特に面白かったのは、ハーバードを主席で卒業したことが自慢である野心家のディックが、調査の過程で知り合ったチャールズを含むヴァン・ドーレン家の人々の知的で上品な生活にどんどん惹き込まれてしまうところ。自身もユダヤ系でありながら、やがて開かれることになる立法委員会でも何とかヴァン・ドーレンの家名が汚されるのを防ごうとするため、奥さんからは“ユダヤ人の卑屈さの現われ”として厳しく非難されてしまう。

ロバート・レッドフォードの監督作品は、これまで「リバー・ランズ・スルー・イット(1992年)」や「モンタナの風に抱かれて(1998年)」のような傾向の作品しか見てこなかったのだが、こういった人間ドラマもなかなか面白く、今度は彼の初監督作品である「普通の人々(1980年)」を見てみようと思う。

ということで、ディックの執拗な追及にもかかわらずTV界はその後も発展を続け、今や完全にマスコミの中心を占めてしまっている。一時期、インターネットがそれに取って代わるのではないかという話もあったが、(スティーブ・ジョブズが言うように)インターネットが利用者に知的な負担を少しでも要求するものである限り、TVの牙城を崩すのは極めて困難なことだと思います。