運命の饗宴

1942年作品
監督 ジュリアン・デュヴィヴィエ 出演 シャルル・ボワイエリタ・ヘイワース
(あらすじ)
ブロードウエイの人気俳優ポール・オーマン(シャルル・ボワイエ)の屋敷に、その夜初日を迎える舞台の衣装用に誂えた新しい燕尾服が届けられる。その服には、クビになった仕立て屋の呪いが込められているという話であったが、自信家のオーマンはそんなことは全く意に介せず、その夜の舞台も大成功。得意顔の彼は、舞台衣装のまま元恋人のエセル(リタ・ヘイワース)の元へ駆けつける….


ジュリアン・デュヴィヴィエが「リディアと四人の恋人(1941年)」の翌年に発表した作品。

彼がハリウッドで撮った4作品の中では、おそらくこの作品が最も有名であり、俺も相当昔にTVの深夜放送で一度だけ見たことがある。仕立て屋の呪いが込められた(?)一着の燕尾服を巡るストーリーが6つ、デュヴィヴィエお得意のオムニバス形式で紹介されるのだが、“お話し”として一番良く出来ているのは第3話であり、これだけはしっかり記憶に残っていた。

チャールズ・ロートン扮する売れない音楽家の話であり、ようやく彼が大舞台でオーケストラの指揮をするというチャンスを掴むものの、貧乏暮らしのため着ていく服がない。そこで、妻役のエルザ・ランチェスターが古着屋から仕入れてくるのが例の燕尾服なのだが、元々ボワイエ用に仕立てられた服がロートンの体型に合う筈もなく、指揮の最中にどんどん袖が綻びてきてしまう。

それに気付いた観客のクスクス笑いが、次第に会場を包み込むほどの大爆笑へと広がっていき、ようやく状況を把握したロートンは舞台上で立ち尽くしてしまうのだが、この何とも残酷なシーンで彼が見せる絶望や怒り、そして自嘲の入り混じった表情は天下一品。そんなどん底の状況を一気にハッピーエンドへとひっくり返す手際の良さも見事だった。

また、エドワード・G.ロビンソンが落ちぶれた弁護士に扮する第4話もなかなか見応えがあるのだが、彼等以外にもトーマス・ミッチェル、ヘンリー・フォンダジンジャー・ロジャース、シーザー・ロメロ、ジョージ・サンダース、ポール・ロブソンといった贅沢な俳優陣が顔を揃えており、彼等のお姿を眺めているだけでも十分楽しめる作品になっている。

ということで、デュヴィヴィエのハリウッド第3作目となる「肉體と幻想(1943年)」にもなかなか豪華な俳優が揃っているのだが、我が国ではまだDVD化されていないらしく、簡単には見られそうもない。いつものことで大変恐縮ではあるが、是非ジュネス企画様のご英断を期待したいと思います。