愛を読むひと

2008年作品
監督 スティーヴン・ダルドリー 出演 ケイト・ウィンスレットレイフ・ファインズ
(あらすじ)
1958年の西ドイツ。15歳の少年マイケルは、学校から帰る途中、急に気分が悪くなったところを偶然通りかかった女性ハンナ(ケイト・ウィンスレット)に助けられる。後日、お礼を言うために彼女のアパートを訪ねたマイケルは、彼女に誘惑され、放課後にベッドを共にするようになるが、その前に彼が本を朗読して彼女に聞かせるのがいつしか二人の日課になっていた….


2008年アカデミー賞ケイト・ウィンスレットが主演女優賞に輝いた作品。

ストーリーに関する予備知識無しでの鑑賞ということで、最初、年頃の少年のひと夏の経験を描いた作品なのかと思って見ていたのだが、突然、ハンナが彼の前から姿を消すあたりからストーリーは全く別の方向へと展開していき、8年後に二人が再会した場所はナチスの戦犯を裁くための法廷だった。

本作は、マイケルの成長に合わせて、年上の女性ハンナに夢中になる少年期、法学生として彼女の裁判に立ち会うことになる青年期、獄中の彼女に自分の朗読した録音テープを送り続ける壮年期、そして年老いた彼女の死に直面する中高年期の4つのパートに大別されるのだが、ハンナに対する彼の思いはそれぞれのパートごとに大きく変化していく。

最初の大きな変化は、ハンナの“正体”が明かされる法廷シーンで訪れる訳であるが、幼かった頃の自分が、アウシュヴィッツに収容されていたユダヤ人の少女たちの代用品に過ぎなかったことを知らされるあたりはなかなか残酷であり、裁判において彼女の有利になる筈のある“秘密”を彼が明らかにしなかったのは、そのことに対する意趣返しの意味もあったのだろう。

これに対し、ハンナの方は相当に頑なな性格の持ち主らしく、自分のコンプレックスに対する拘りも人一倍なのだが、そんな女性を演じさせたらケイト・ウィンスレットは天下一品。決して好きなタイプの女優さんではないのだが、とても説得力のある演技を披露してくれており、アカデミー賞の主演女優賞は伊達ではなかった。

ということで、本作はハンナの悲劇の物語でもあるのだが、同じ過ちを繰り返さないためにも戦争犯罪をうやむやなままにしておくことは許されず、300人のユダヤ人を見殺しにしたことの責任は誰かがしっかりと引き受けなければならないのでしょう。