月光の女

1940年作品
監督 ウィリアム・ワイラー 出演 ベティ・デイヴィスハーバート・マーシャル
(あらすじ)
シンガポールにあるゴム園の支配人ロバート・クロスビー(ハーバート・マーシャル)の妻レスリーベティ・デイヴィス)は、夫の留守中に訪ねてきたハモンドという男を銃で殺害。急遽帰宅してきたロバートや弁護士等の前で、彼女は、夫の留守を狙って執拗に言い寄ってきたハモンドから身を守るための正当防衛を主張し、彼等もそれを信じるが、その後、彼女がハモンドに宛てた一通の手紙の存在が明らかになる….


ベティ・デイヴィスウィリアム・ワイラーと組んだ2本目の作品。

先日拝見させて頂いた「ラインの監視(1943年)」における健気な人妻役にちょっと新鮮な感動を覚え、彼女がその3年前に出演した本作を見てみることにした訳であるが、映画開始早々、男に向かって銃弾を発射し続ける勇ましいお姿は、俺が以前から抱いていたイメージどおりの彼女だった。

そんなベティ・デイヴィス(=本作公開当時32歳)が演じるレスリーは、普段は華奢な身体つきをした貞淑そうな若妻なのだが、一度開き直ったときに見せるふてぶてしい態度はなかなかの迫力であり、この硬軟自在な使い分けによって、夫のロバートや友人でもある弁護士のハワードを自分の思いどおりに操ることに成功する。

しかし、そんな彼女の前に立ち塞がるのが“マレー”という異国の地に住む不思議な人々であり、特に殺されたハモンドの未亡人という女性の放つオーラは、エキゾチックと言うのを遥かに通り越し、ほとんど妖怪じみたレベル。美人のレスリーを振って、この見るからに怖そうなオバさんのもとへ走ったハモンドという男は、余程の物好きだったとしか思えない。

まあ、この未亡人にしろ、ハワードの助手のオングにしろ、マレーに住む人々のことを安易に“理解不能な相手”として整理してしまっているあたりがちょっと残念なところであり、確かに西欧流とはかなり異なるのかもしれないが、彼等なりの考え方をきちんと説明させる場面があっても良かったと思う。

ということで、期待していた内容とはちょっと違っていたし、異国情緒に逃げた感のあるラストにも一抹の物足りなさを感じたものの、ベティ・デイヴィスの個性とウィリアム・ワイラーの端正な演出との相性は良好のようであり、両者がコンビを組んだ残りの2本も見てみたくなりました。