ハート・ロッカー

2008年作品
監督 キャスリン・ビグロー 出演 ジェレミー・レナーアンソニー・マッキー
(あらすじ)
2004年夏。イラクバグダッド郊外で爆発物処理の任務に就いていたアメリカ陸軍のブラボー中隊は、作業中に起こった爆発により班長のトンプソン軍曹を失ってしまう。残されたサンボーン軍曹(アンソニー・マッキー)とエルドリッジ技術兵の二人は、新たに赴任してきたジェームズ二等軍曹(ジェレミー・レナー)を新リーダーに迎え、爆発物処理作業を再開することになるが….


2009年アカデミー賞で作品賞、監督賞、 脚本賞等を独占した作品。

本来ならばもっと早くに見ておくべき作品なんだろうが、若い頃に見た「ジャガーノート(1974年)」のトラウマにより爆弾の出てくる映画はちょっと苦手。しかし、冒頭のトンプソン軍曹の殉職シーンを見て、やたらサスペンスをかきたてるような演出にはなっていないことが良く分かり、後は比較的冷静に見続けることが出来た。

新リーダーのジェームズ二等軍曹は爆発物処理のベテランであり、(少々の問題はあるものの)どんな危険な状況にも自ら率先して立ち向かっていくというキャラクター。しかし、そんな彼からは、過去にジョン・ウェインスティーヴ・マックィーン等が演じてきたヒーローが漂わせていた“勝者の余裕”みたいなものを感じ取ることは全く出来ない。

まあ、それには様々な理由があるのだろうが、俺が一番印象に残ったのは彼等が行っている“戦闘”の中途半端さ。彼等が直接戦っている相手は爆破テロの一味ということになるのだろうが、実際に“敵”の姿を目にする機会はほとんどないし、守るべき一般のイラク人の方々との見分けもつかない。

また、その“戦場”となるのはバグダッドの市内であり、すぐ傍らでは普通の日常生活が営まれているということで、見ようによっては道路や下水管の工事と大差ない。彼等の命懸けの“勝利”も見た目には相当地味であり、やはり一般のイラク人の方々から感謝されることもあまりない。

ということで、本作は決して反戦映画という訳ではないのだが、今、イラクにおいて何か間違ったことが起こっているということを力強く物語っており、見る者の厭戦感をかきたててくれるのだけは間違いのないところです。