スコット・ピルグリムVS. 邪悪な元カレ軍団

2010年作品
監督 エドガー・ライト 出演 マイケル・セラメアリー・エリザベス・ウィンステッド
(あらすじ)
最近、高校生の彼女が出来たスコット・ピルグリムマイケル・セラ)は、アマチュア・ロック・バンド“セックス・ボブオム”のベーシスト。ある日、自分の夢に出てきた美女とうり二つの女の子ラモーナ(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)に出会って以来、すっかり彼女に夢中になってしまうが、そんな彼の前に、突然、ラモーナの元カレという男が現れ、彼に勝負を挑んでくる....


ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!(2007年)」のエドガー・ライト監督の新作。

主人公のスコット君は外見的には完全なオタク青年であり、バンドでの役割も比較的地味なベーシスト。そんな彼が、美人のラモーナと可愛らしい高校生のナイブスという2人の女性から同時に好意を寄せられてしまうというストーリーは、まあ、世のオタク男性(=おそらく俺も含まれている。)の妄想そのものと言って良いだろう。

7人の元カレ軍団と闘うスコット君がいきなりスーパー能力を身に付けてしまうという安直な展開も正に妄想世界ならではのことであり、彼はその闘いを通して他人の気持ちを思いやることの大切さを学ぶことになるのだが、彼が最後に開けたドアの向こうにあるのが、現実世界なのか、それとも新たな妄想世界なのか、ちょっと心配になってしまった。

エドガー・ライトの演出は、TVゲームやコミックのギミックをふんだんに取り入れており、視覚的にも聴覚的にもなかなか楽しませてくれる。また、これは「ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!」を見たときにも感じたことであるが、スピーディーな演出とかなり込み入った脚本とを合体させることにより生じるこの不思議な感覚は、むしろ彼の持ち味と考えるべきなのかもしれない。

スコット役のマイケル・セラは、一見、主役とは思えないサブ・キャラ風な容姿の持ち主であるが、ストーリーが進んでいくに連れ、どんどん存在感を増していくのは実力がある証拠なんだろう。ヒロインはラモーナ役のメアリー・エリザベス・ウィンステッドであるが、印象的にはナイブスに扮したエレン・ウォンの方が勝っており、貴重な東洋系のポッチャリ女優として今後も頑張って欲しい。

ということで、TVゲーム的な演出のうち、直接ストーリーに絡んでくるのは“1up”くらいであり、レベルアップや敵を倒したときに貰えるコインがほとんど無意味というのはちょっと残念。また、DVDの特典映像に入っていた巨大化ギデオンとの闘いも是非見てみたかったところです。