バトル・オブ・ザ・セクシーズ

2017年
監督 ヴァレリー・ファリスジョナサン・デイトン 出演 エマ・ストーンスティーヴ・カレル
(あらすじ)
女子テニス界で圧倒的な人気と実力を誇っていたビリー・ジーン・キング(エマ・ストーン)は、女子の優勝賞金が男子の1/8に過ぎないことに反発し、1973年に自ら“女子テニス協会”を設立する。仲間たちの協力のお陰もあって、何とか無事に選手権の開催にこぎつけるが、そんなある日、55歳になった往年の名選手ボビー・リッグス(スティーヴ・カレル)から対戦を申し込まれる…


1973年に実際に行われたテニスの男女対抗試合を題材にした作品。

当時は“キング夫人”と呼ばれて我が国でも良く知られたテニス・プレーヤーだったが、その頃でも既婚の女子選手に対して“~夫人”という呼び方が使われていたのはテニス界くらいのもの。おそらくはその上流階級的なイメージに由来するのだろうが、まあ、女性差別的な印象を与える呼び方であることは否定できないだろう。

そんな時代の話なので、“悪役”のボビー・リッグスによる女性差別的な言動は常軌を逸しているとしか言いようのないレベルなのだが、主人公のビリー・ジーンは彼が道化に過ぎないことを良く理解しており、彼女が本当の“敵”として認識しているのは全米テニス協会のジャック・クレーマー。一見すると彼は非の打ち所のない立派な紳士であり、女性に対してもとても礼儀正しいのだが、その実態は徹底した男尊女卑論者なんだよね。

結局、ボビーとの対戦はビリー・ジーンのストレート勝ちに終るのだが、彼女が本当に戦っていたのはそんなジャック・クレーマーに代表される女性差別の現状。勿論、この試合に勝ったからといって現状が劇的に改善する訳ではないのだが、結果が逆だったときのことを考えると恐怖しか思い浮かばず、試合後における彼女の安堵の涙がとても印象的だった。

ちなみに、本作では主人公と美容師マリリンとの間の“不倫”を描くことによってLGBTの問題も取り上げているのだが、その主張が中途半端に終っているのは“史実”故の限界なんだろう。ただし、その中途半端さが作品全体にモヤモヤした印象を残してしまっているのも事実であり、もう少し脚本で上手く整理できなかったのかなあ。

ということで、本作は30年以上昔の話であるが、ハリウッド映画界において女優のギャラが男優のそれを大きく下回っていることが話題になったのはつい先頃の話であり、男女平等ランキングが110位という我が国の現状が改善される見込みは(プロゴルフ界を除き)依然として希薄。とりあえず「アベンジャーズ/エンドゲーム」におけるキャプテン・マーベルの活躍でも見て気を紛らわせたいと思います。