ローズ

1979年
監督 マーク・ライデル 出演 ベット・ミドラーアラン・ベイツ
(あらすじ)
売り出し中の女性ロック・シンガーであるローズ(ベット・ミドラー)は、連日のように続くコンサートのせいで相当お疲れのご様子。マネージャーのラッジ(アラン・ベイツ)に対し、故郷フロリダでの公演の後の一年間の休暇を願い出るも全く相手にしてもらえず、あるミュージシャンからの心無い言葉に傷ついた彼女は、偶々乗り込んだ車の運転手ダイアーと一緒に夜の街の中へと逃げ出してしまう…


夭折した伝説的な女性ロック・シンガーのジャニス・ジョプリンをモデルにしたベット・ミドラーの初主演作品。

ジャニス・ジョプリンが死亡したのは1970年10月のことであり、中学生になった俺が洋楽に興味を抱く寸前にあの世へと旅立ってしまった。そして、そのわずか2年後に何とも色っぽい「Do You Want to Dance」で輝かしいデビューを飾ったのがベット・ミドラーであり、そのことについては俺の記憶にハッキリと残っている。

そんな彼女が、ジャニスをモデルにした破滅型のロック・シンガーのローズを熱演しているのがこの作品であり、当然、コンサートで歌うシーンが何度も出てくるのだが、日頃のちょっぴりおしゃれでレトロっぽいイメージをかなぐり捨てた彼女は、荒々しい大迫力のパフォーマンスを披露してくれている。

おそらく、実際にコンサート会場の大観衆を目の前にして歌っているシーンを撮影しているのだろうから、そのライヴ感は本物であり、何と言ってもこのコンサート・シーンを見せるだけで世界中のロック・ファンを納得させてしまえるところが本作の強み。カヴァー曲の「When a Man Loves a Woman」もなかなかの熱唱であった。

ストーリー的には、ローズが故郷フロリダでの凱旋公演(?)にこだわった理由に関する説明がやや不足しているため、ジャニス・ジョプリンの悲惨だった少女時代に関する予備知識が無いと、ローズが単なるわがまま女に見えてしまうおそれがあるのだが、本作が公開された1979年当時にはそんなことは周知の事実だったのかもしれない。

ということで、なかなか面白く拝見させて頂いた訳だが、ジャニス・ジョプリンベット・ミドラーとの年齢差がわずか3歳弱しか無いことを考えると、ちょっぴり複雑な気分になってしまうのも事実。この3年くらいの短い間にカウンターカルチャーの象徴であった“ロック・ミュージック”も、単なる商業音楽の一分野へと大きくその立ち位置を変えてしまったんですね。