ハンター

1980年作品
監督 バズ・キューリック 出演 スティーヴ・マックィーン、キャスリン・ハロルド
(あらすじ)
ラルフ・ソーソン(スティーヴ・マックィーン)は、保釈中に行方をくらました逃亡者を捕まえて謝礼をもらうという腕利きの賞金稼ぎ。仕事を終えて帰ってきた自宅では、彼を慕って毎日のように押しかけてくる“元逃亡者”の連中や彼の子供を妊娠している女教師のドティ(キャスリン・ハロルド)が彼の帰りを歓迎してくれたが、そんなところへ彼の殺害を予告する一本の電話がかかってくる…


大脱走(1963年)」からのスティーヴ・マックィーンつながりで、彼の遺作を鑑賞。

アメリカには被疑者の保釈金の立替えを業とする“保釈保証人”なる業者が存在するそうであり、本作の主人公であるラルフ・ソーソンに仕事を依頼してくるのもそんな人たち。彼等から賞金額の提示を受けたラルフは、逃亡中の被疑者を追って全米中を旅することになる。

まあ、これが西部時代の話なら、たった一人で馬に跨がって荒野を彷徨うというのもそれなりに絵になるのだろうが、司法制度の発達した現代では完全に時代遅れの存在。MA-1ジャケットとジーンズに身を包んだ我等がラルフも、荒馬ならぬ車の運転はからっきし下手だし、趣味は昔のブリキのおもちゃを集めること。

さらには、高級車を運転している黒人を不思議そうな顔で眺めてみたり、恋人のドティから妊娠を告げられたときには迷わず中絶を勧める(=幸い、彼女は拒否)といった具合に全くの後ろ向きの人生を送っており、うん、このあたりはクリント・イーストウッドの「グラン・トリノ(2008年)」の主人公に似ているのかな。

Wikipediaによると、スティーヴ・マックィーンが自身の胸膜中皮腫を知らされたのは本作の撮影終了後のことらしいのだが、既に体調は万全ではなかったようであり、映画の方でも久しくヒット作から見放されていたということで、それらがラルフのキャラ設定に影響を与えた可能性は否定できないところ。ガラッと雰囲気の変わる取って付けたようなハッピーエンドは、そんな彼の心機一転の決意を現していたのかもしれない。

ということで、スティーヴ・マックィーンの遺作としては少々寂しい低予算映画ではあるが、イーライ・ウォラックベン・ジョンソンといったかつての共演者たちが花を添えてくれているのが見ていてとても嬉しかった。幸い(?)、彼の主演作にはいくつか未見の作品もあるようであり、今後機会を見つけて楽しませて頂こうと思います。