ファーゴ

1996年作品
監督 ジョエル・コーエン 出演 フランシス・マクドーマンドスティーヴ・ブシェミ
(あらすじ)
ミネソタ州ミネアポリスに住むカー・ディーラーのジェリー・ランディガードは、金持ちの義父から大金をせしめるため、偽装誘拐を企てる。前科者の従業員から紹介されたカール(スティーヴ・ブシェミ)とゲアの二人組に依頼して、何も知らない妻のジーンを誘拐させたまでは良かったが、ふとしたことが原因で逃走中の彼等が警官を射殺してしまったことから、次第に歯車が狂い始める….


コーエン兄弟の代表作の一つである実話を基にした(?)犯罪ドラマ。

このカールとゲアの二人組、どうやら即席のコンビだったらしく、お互いの性格もロクに知らないまま、ジェリーの依頼を引き受けてしまったらしい。最初は、比較的人の良さそうなカールの方がリーダーシップを握っているように思えたのだが、仮ナンバーを付けずに車を走らせていた彼等を見咎めた警官をゲアがあっさり射殺してしまうあたりから形勢が逆転。結局、ゲアが5人、カールが2人を殺害するという一大事件へと発展していく。

そして、この事件の捜査を担当することになるのが田舎町ブレイナードの女性警察署長であるマージ・ガンダーソンであり、何と妊娠8ヶ月の妊婦さん。演じているのは公開当時39歳のフランシス・マクドーマンドという女優さんであり、立派な高年齢出産になる訳であるが、そんな彼女が大きなお腹を抱えながら凶悪事件の捜査に当たる姿は、コーエン兄弟の作品らしい非日常的なユーモア感に溢れている。

一方、偽装誘拐の首謀者であるジェリーに関するエピソードはドタバタ喜劇風に描かれる等、各主要登場人物のキャラクターに合わせた演出の使い分けの巧みさは見事であり、カールとゲアの二人組による殺人行脚の無軌道ぶりと、マージの理詰めな捜査スタイルとの対比も効果的だった。

出演者も魅力的な俳優さんばかりであるが、やはり主演のフランシス・マクドーマンドスティーヴ・ブシェミの二人が目立っており、前者は本作の演技でアカデミー賞の主演女優賞に輝いている。また、後者の演じた、どこか憎めない小悪党カールのキャラも絶品であり、まあ、“変な顔の小男”を演じさせたら彼の右に出る者はいないだろう。

ということで、コーエン兄弟の作品を見たのは「ノーカントリー(2007年)」に続いてこれが2本目だったのだが、どうしてもっと早く見なかったのかと悔やむほど面白い作品。今後、ちょっと力を入れて彼等の作品を拝見させて頂こうと思います。