大脱走

1963年作品
監督 ジョン・スタージェス 出演 スティーヴ・マックィーンジェームズ・ガーナー
(あらすじ)
第二次世界大戦下のドイツ。連合軍捕虜のうち脱走の常習犯である者を一括して管理するために新たな捕虜収容所が建てられ、多くの英国人捕虜に混じって米国人のヒルツ(スティーヴ・マックィーン)やヘンドリー(ジェームズ・ガーナー)等も移送されてくる。そんな彼等に対し、収容所のフォン・ルーゲル所長は“この収容所から脱出することは不可能である”と脱走を諦めるよう説得するが…


ジョン・スタージェスが「荒野の七人(1960年)」の3年後に発表した脱走映画の快作。

早朝山歩きにでも出掛けようかと早起きしてみたのだが、天気の崩れは予想したよりも早いようであり、今にも降り出しそうな曇天を見上げて意気消沈。もう一度寝直すのも能がないので、妻や娘が起きてくるまでのヒマ潰しということで久しぶりにこの旧作をながめてみることにした。

さて、本作をビデオかDVDかで最後に見たのはおそらく今から20年以上昔のこと。その頃でさえ“随分ユル〜イ戦争映画だなあ”と思いながら見た記憶が残っているくらいなので、正直、今回は途中で飽きてしまうのではないかとちょっぴり不安だったのだが、そんな心配は全くの杞憂。

“ビッグX”ことロジャー・バートレット(リチャード・アッテンボロー)の指揮の下、全員が協力し合って脱走の準備を進めていくというちょっぴりユーモラスな雰囲気を漂わせた前半と、“モグラ”ことアイブスの悲劇的な死によって一気にシリアス・モードへと突入していく後半という組合せは、間違いなく黒澤の「七人の侍(1954年)」であり、うん、これで面白くならない筈がない。

もちろん、それはジョン・スタージェスが「荒野の七人」を監督した経験から会得したテクニックであり、ロジャー=島田勘兵衛(志村喬)、ヒルツ=菊千代(三船敏郎)っていうイメージで演出していたんじゃないのかなあ。当然、アイブスは千秋実の演じた林田平八にピッタリだし…

ということで、見ている途中に起きてきた妻&娘からも特に苦情は出なかったため、そのまま最後まで無事鑑賞。同じ戦争を描いていても、受けるイメージは先日拝見させて頂いた「この世界の片隅に(2016年)」とは大違いなのだが、まあ、それが筒井の言っていた“戦争の多面性”ということなのでしょう。