泳ぐひと

1968年
監督 フランク・ペリー 出演 バート・ランカスター 、ジャネット・ランドガード
(あらすじ)
ある邸宅のプールに水泳パンツ姿で現れたネッド・メリル(バート・ランカスター)は、久しぶりに顔を合わせたその家の主人等と歓談しているうちに、高級住宅地の中に点在する知人宅のプールを次々に泳いで丘の向こうの自宅まで帰るという突飛なアイデアを思い付く。愛妻の名前を取ってそのルートに“ルシンダ河”という名前を付けた彼は、早速、次の邸宅のプールへと向かうのだが…


ジョン・チーヴァーの同名短編小説をベースにしたバート・ランカスター主演の異色作。

森の中から現れた主人公がいきなり他人の家のプールに飛び込むという導入部からして、何やら異様な雰囲気を漂わせた作品なのだが、そんな主人公と知人たちとの会話の微妙なズレがその異様さを一層際立たせていく。まあ、この段階で結末がハッピーエンドにならないことはほぼ確実であり、イヤ~な気分を我慢しながら見続ける。

さて、会話の内容から推測すると、ネッドはその高級住宅地の中でも人々の注目を集めるような存在であり、それなりに妻以外の女性との恋愛関係も楽しんでいたらしい。しかし、数年前に何らかのトラブルに巻き込まれて破産してしまい、それからずっと知人たちの前から姿を隠していた…

奇妙なのは、ネッドがこの破産の事実を全く覚えていないことであり、久しぶりに再会した知人から家族の現況を尋ねられても“妻は元気で娘たちはテニスに夢中”という無内容な答を繰り返すだけ。まあ、合理的に考えれば、破産のショックから記憶障害になってしまったネッドが、収容されていた施設から脱走してきたというのが真相なのかもしれないが、それにしては彼の均整のとれた肉体は引き締まっており、羨ましいくらい健康的に見える。

そこで考えてみたのだが、もしかするとネッドは当時の米国高級住宅地に出没していた妖怪の一種だったのではなかろうか。そこの住民は一応アメリカンドリームの勝者ということになっているのだが、その生活実態は綱渡りのように不安定なものであり、常に破産の危機に晒されている。そんな不安感が生み出した妖怪がネッドであり、当時の新興住宅地では頻繁に目撃されていたのだろう。

ということで、「黒い牡牛(1956年)」や「狩人の夜(1955年)」同様、本作もU-NEXTで見たのだが、そのアカ抜けしない仕様とは裏腹に洋画のラインアップはなかなか充実しており、これら以外にも興味深い作品がいくつか並んでいる。当初の予定では、無料トライアル期間終了時に解約するつもりでいたが、もう少し様子を見てみることにします。