2018年
監督 高坂希太郎
(あらすじ)
交通事故で両親を亡くした小学6年生の“おっこ”こと関織子は、母方の祖母の経営する温泉旅館“春の屋”に引き取られ、ひょんなことから若おかみとして修業を始めることになる。古びた旅館にはウリ坊という名前の男の子の幽霊が住み着いており、彼の励ましを受けながら旅館の仕事を少しずつ覚えていく織子だったが、不思議なことにウリ坊の姿を見ることが出来るのは彼女だけだった…
先日、Eテレで放映された作品を録画しておいたものを家族で観賞。
劇場公開当時、一部のアニメ・ファンから高い評価を受けていたのは知っており、少々気にはなっていたのだが、タイトルからして如何にも“お子様向け”であり、見てみようという意欲がどうしても湧いてこない。そんなところに飛び込んできたのがEテレでの地上波初放送のニュースであり、まあ、タダなら良いかということで録画の予約をしておいた。
さて、作画のタッチは完全に健全なお子様仕様であり、ウリ坊以外にも、イタズラ好きな幽霊の美陽や子鬼の姿をした鈴鬼といった具合にお子様受けしそうなキャラクターが出てくる。しかし、意外にも彼らがストーリーに直接関わることは少なく、中心になって描かれているのは、様々な問題を抱えてやってくる旅館のお客たちを何とか元気づけようとする織子の奮闘ぶり。
作品の冒頭で両親の交通事故死のシーンがかなり衝撃的に描かれているにもかかわらず、若おかみになってからの織子は元気いっぱいであり、両親の夢を見た後も涙一つ見せない。それどころか、逆に“死んでしまったなんて信じられない”と言って、母親を亡くして落ち込んでいるお客の男の子を励ましたりする。
しかし、実はこの“死んでしまったなんて信じられない”というセリフがクセモノであり、次第に彼女が両親の死という現実を受け入れられずにいることが明らかになっていく。おそらく彼女にだけ幽霊や子鬼が見えるのはこの現実逃避の故であり、夢の中に出てくる両親に会っても動揺しないのは、そっちの方が彼女にとっての“現実”だったからに他ならない。
ということで、両親の交通事故死の“加害者”との偶然の出会いを通じて、織子はその問題の克服に成功するのだが、それは今まで彼女を励ましてくれたウリ坊たちとの別れにも繋がる訳であり、このへんのストーリー構成の巧みさは見事なもの。唯一の欠点は、終わり方があまりにも完璧過ぎるため、続編が期待できないことくらいでしょう。