JUNO/ジュノ

2007年作品
監督 ジェイソン・ライトマン 出演 エレン・ペイジマイケル・セラ
(あらすじ)
同級生のポーリー(マイケル・セラ)の子を妊娠してしまったジュノ(エレン・ペイジ)は、まだ16歳の高校生。両親に相談する訳にもいかず、一度は中絶を考えるが、“お腹の赤ちゃんにはもう爪も生えている”と教えられ、出産を決意する。生まれてくる子供の里親になってくれるという若夫婦をフリーペーパーで探し出した彼女は、いよいよ自分の両親に妊娠の事実を告げることになるが….


アカデミー賞にノミネートされたこともあって、昨年、ちょっと話題になった作品。

女子高生の妊娠という、本来ならあまり食指が動かない類の作品であるが、コメディだということなので、一応拝見させて頂いた。まあ、日本とアメリカの違いというのもあるんだろうが、実際、深刻ぶった修羅場シーンは全くと言って良いほどに登場せず、(良くいえば)とても前向きな内容の作品になっている。

その理由としては、主人公のジュノの“独立心が強くて物怖じしない”というキャラクター設定によるところも大きいんだろうが、それ以上に彼女の妊娠を道徳的に批判していないという点が重要なんだと思う。(例えば、作中で“十代の母親による育児環境は劣悪”と説教を述べる超音波検査技師に対しては、ジュノの義母(=父親の後妻)が痛烈な皮肉で逆にやりこめてしまっている。)

確かに、生活力のない女子高生の妊娠というのがトラブルであることは間違いないが、本作はジュノやその周囲の人々がそのトラブルをどう乗り越えていくかという観点から描かれているため、見終わっての印象は誠にスッキリ爽やか。まあ、少なくとも我が国のドロドロ系TVドラマを見るよりもずーっと楽しかったことだけは間違いない。

主人公のジュノ役であるエレン・ペイジは、「X-MEN:ファイナル ディシジョン(2006年)」で、あの壁抜け少女のキティを演じていた女の子。本作では、生まれてくる子供の里親候補になるおじさん(=30代?)にMott the Hoopleの「All the Young Dudes」を勧めるような、ちょっと生意気な女子高生を演じているが、IMDBによると1987年生まれということなので、本作公開当時の実年齢は20歳。欧米人には珍しく、実年齢より若く見えるタイプの女優さんらしい。

ということで、最後まで罰せられることのないジュノとポーリーの幸せそうなラストシーンを見せられると、正直、ちょっと物足りなさを感じないでもないが、その物足りなさの正体は、案外、歪んだ優越感の裏返しだったりすることもあるので注意が必要。まあ、万々が一、我が家の娘があのような状況に陥った場合には、ジュノの父親と同様、冷静な態度で対処したいものです。