ビッグ・アメリカン

1976年作品
監督 ロバート・アルトマン 出演 ポール・ニューマンバート・ランカスター
(あらすじ)
バッファロー・ビル”として有名なビル・コーディ(ポール・ニューマン)の率いるワイルド・ウェスト・ショウは今日も大人気。新たな出し物として、カスター将軍の第7騎兵隊を全滅させた伝説的なインディアンの酋長シッティング・ブルと出演契約を結ぶが、一座にやって来た実物の彼は風采の上がらないただの小男であり、ビルは彼を大観衆の前に立たせて笑いものにしようとする….


ロバート・アルトマンが、「ナッシュビル(1975年)」の翌年に発表した作品。

バート・ランカスターが演じているのは作家のネッド・バントラインであり、作品の冒頭で“The Legend Maker”と紹介されているとおり、世間一般に知られている伝説的ヒーロー“バッファロー・ビル”のイメージの大半は、彼が小説で創り出した虚構でしかない。

これに対し、もう一人の伝説的人物であるシッティング・ブルの方は掛け値なしの本物であり、現実の世界では、ビルはあらゆる面において彼の後塵を拝するばかり。初めてシッティング・ブルの姿を見た観衆たちも、最初の頃はイメージとの落差に戸惑っていたものの、最後はその存在感に威圧されたのか、彼に対して大きな拍手を贈るようになる。

結局、ビルがシッティング・ブルの存在を(一応)克服することが出来たのは、ブルが非業の死を遂げた後のことであり、ワイルド・ウェスト・ショウの新たな出し物として、シッティング・ブルの格好をさせた大柄なインディアンを格闘の末、ナイフで倒す彼の得意げなポーズで本作は幕を閉じる。

まあ、これがビッグ・アメリカンの真の姿であり、それに歓声を送る多くの人々を含めてとんでもなく惨めな光景なのだが、考えてみれば、本作のビル・コーディとネッド・バントラインの関係は、例えば我が国の坂本竜馬司馬遼太郎の関係に通じるところが無きにしも非ず。いずれにしても、ネッドの言うように“歴史とノスタルジーは別”ということを我々は常に意識していなければいけないのだろう。

ということで、見ていて気になったもう一つのことは、ビルのワイルド・ウェスト・ショウにおいて、開拓者の白人は常に“被害者”として描かれているところ。我が国では、現在、太平洋戦争で亡くなられた特攻隊員を被害者と位置づけた映画が大ヒットしているらしいのだが、特攻隊の加害者としての側面から目を逸らしてしまうのは重大な誤りだと思います。