サイレント・ムービー

1976年作品
監督 メル・ブルックス 出演 メル・ブルックスマーティ・フェルドマン
(あらすじ)
酒で身を持ち崩した映画監督のメル・ファン(メル・ブルックス)は、再起をかけたサイレント映画の企画の売込みのため、仲間のエッグス(マーティ・フェルドマン)やベルと一緒にビッグ・ピクチャーズ撮影所の所長を訪ねる。ちょうど会社乗っ取りの危機に瀕していた所長は、撮影所再建のチャンスとばかりその企画に飛びつくのだが、そんな彼等に乗っ取り会社の魔の手が伸びる….


メル・ブルックスが「ブレージングサドル(1974年)」の次に発表した作品。

何故か、今どき時代遅れのサイレント映画を作ろうとする人々の奮闘を描いたドタバタ喜劇なのだが、実はこの作品自体がサイレント映画という、まあ、いかにもメル・ブルックスらしい遊び心に溢れた作品である。

メル・ファン等は、この企画が成功するよう大勢の大スター達に直接出演交渉を行うのだが、その相手というのがバート・レイノルズジェームズ・カーンライザ・ミネリアン・バンクロフトマルセル・マルソー、それにポール・ニューマンという正に錚々たる面々。実際に彼等自身が出演しているのだが、そこはドタバタ喜劇ということで、いつもの彼等とはちょっと違った一面を見せてくれるのがとても面白い。

特に最高なのは、若いツバメに囲まれてお高くとまっている大女優のアン・バンクロフトを徹底的にコケにするシーンであり、まあ、これは彼女がメル・ブルックスの現実の配偶者だからこそ許されるのであろうが、彼女自身もノリノリでマーティ・フェルドマンも顔負けの“目玉芸”を披露してくれる。

その他にも、バート・レイノルズの胸毛の濃いところや、ポール・ニューマンの足の骨折といった少々危ないネタを使って笑いを取っているのだが、こういうところを見ると、メル・ブルックスという人がハリウッドの仲間達からいかに信頼されているかということが良く判るような気がする。

ということで、サイレント映画にもかかわらず、本作ではたった一言だけ音声付きのセリフが発せられるのだが、それを発するのがいつもは喋らないパントマイムの大御所マルセル・マルソーということで、まあ、どこまでも人を食った愉快な作品でした。