砲艦サンパブロ

1966年作品
監督 ロバート・ワイズ 出演 スティーヴ・マックィーンリチャード・アッテンボロー
(あらすじ)
1926年の上海。揚子江沿岸の米人警護等を行う砲艦サンパブロ号に一等機関兵のジェイク・ホルマンスティーヴ・マックィーン)が赴任してくる。単調な勤務の繰返しに艦の乗組員の士気は低く、そのような状況に疑問を感じるジェイクは周囲から孤立するが、心優しいフレンチー(リチャード・アッテンボロー)だけは彼の味方だった。一方、中国国内では国民党と共産党の内戦が次第に激化し、各地で外国人排斥運動が頻発する….


マックィーンつながりということで、題名と出演者から「大脱走(1963年)」みたいな内容を予想して観てみたんだが、これが大ハズレ。満州事変(1931年)直前の頃のアメリカと中国との微妙な対立関係を背景に戦争の理想と現実を描く、というとてもまじめな作品でした。

船のエンジンにしか興味がなかったジェイクが、様々な人々との出会いと別れを経験することによって、次第に自分の置かれている現状(=軍隊)に疑問を持つようになる、というのが話の大筋になるわけだが、軍人としてのプライドを第一に考え、彼と対立する艦長にしても、決して悪人としては描かれておらず、単純な勧善懲悪ものにはなっていない。故郷から遠く離れた地で命を落とす、ジェイクの最期の言葉がこの作品のテーマなのでしょう。

何といっても3時間を超える大作のためいろいろな人物が出て来るんだけど、主要な登場人物が、若き日のキャンディス・バーゲン(美人!)扮する女教師を除き、次々と死んでいくというストーリー展開にはちょっとビックリ。それと、中国人の描き方が単純すぎる(=良い中国人は親米派で、それ以外はエイリアン)のが気になったが、これがハリウッドの限界というところか。

主演のマックィーンは“エンジニア”の役なんだけど、やたら射撃が上手かったり、ちょっとした身のこなしがやたらカッコよかったりするのは、まぁ、映画的に仕方ないところでしょう。一方、リチャード・アッテンボローは「大脱走」の“ビッグX”とは全く違った役を力演。本来は青二才がやっても良いような役柄なんだが、冴えない中年男の彼が演じたことによって “許されない結婚”の悲しさが一段とよく伝わってきたと思う。