海月姫

2014年作品
監督 川村泰祐 出演 能年玲奈菅田将暉
(あらすじ)
田舎から上京してきた倉下月海(能年玲奈)はクラゲのことを愛してやまないオタク女子であり、彼女が住んでいるアパート「天水館」の住人も男とは縁の無いオタクばかり。ある日、クラゲのことでペットショップの店員と口論になっているところを謎の美女に助けられた月海は、彼女を自分の部屋に一晩泊めることになるが、翌朝目を覚ますと部屋に寝ていたのは女装趣味の大学生である鯉渕蔵之助(菅田将暉)だった…


最近、何かと話題になっている“のん”こと能年玲奈の主演映画第二弾。

あまちゃん」はほとんど見ていないので、決して能年玲奈のファンという訳ではないのだが、所属していた芸能事務所とのイザコザが原因で、本名でもある“能年玲奈”という名前を使えなくなってしまったというニュースにジジイの父性本能が発動。ヤンキーは苦手なので、前作の「ホットロード(2014年)」ではなく、こちらを見てみることにした。

さて、原作は東村アキコのギャグ少女マンガであり、地上げ屋の陰謀による天水館の立退き要求に対し、一致団結したオタク女子たちがクラゲをモチーフにしたファッションブランドの立上げを武器にして対抗する、というストーリーは意外性もあって決して悪くない。

問題なのは、(読者が感情移入しやすいように)主人公を王子様役より平凡に描いてしまうというラブコメ系少女マンガの伝統をそのまま映画化してしまったところであり、「クラゲ好き+きちんとメイクすれば美人」という属性しか持たないヒロインに比べ、「女装趣味+スタイル抜群+不幸な生い立ち+父親は現職の総理大臣」という輝かしい属性を有する蔵之助の方が圧倒的に目立ってしまっている。

クライマックスとなるファッションショーの場面にしても、蔵之助がほぼ出ずっぱり状態なのに対し、月海の見せ場はご近所からヘアドライヤーを借り集めてくるところくらいであり、これではどちらが主役なのかさっぱり分からない。せめて、映画的な工夫として、最後のクラゲ・ドレスくらいはヒロインに着させてあげるべきだったろう。

ということで、事実、女装したときの蔵之助の立ち姿はとても美しく、器用さが目立つ菅田将暉の前で能年玲奈の不器用さが目立ってしまっているのは残念至極。しかし、往年のハリウッドスターの顔ぶれを思い返せば明らかなとおり、いつまでも我々の記憶に残るのは不器用な俳優の方であり、能年玲奈様におかれましては、そのユニークな個性を活かして末永くご活躍頂きたいと思います。