ブリッジ・オブ・スパイ

今日は、妻と一緒にスティーヴン・スピルバーグ監督の新作「ブリッジ・オブ・スパイ」を見に行ってきた。

先週、「パディントン(2014年)」との二者択一に敗れ去った本作であるが、その背景には“スピルバーグ作品ならロングランは間違いないだろう”という油断があったのも事実。ところが、本作の興行成績は予想外に伸びなかったようで、映画館での上映回数もあっと言う間に激減してしまい、打切りにならないうちにということで慌てて映画館に駆けつける。

さて、ストーリーは大きく2つのパートに別れており、主人公である弁護士のジェームズ・B.ドノヴァン(トム・ハンクス)が、ソ連のスパイとして逮捕されたルドルフ・アベルの裁判で弁護を務めるというのが本作の前半部分。判事も含め、ほとんどの国民が“死刑になるのが当然”と考えている中、ドノヴァンはFBIによる捜査の違法性を指摘してアベルの無罪を主張する。

まあ、結局は最高裁でも僅差で有罪になってしまうのだが、彼の“ソ連の脅威があるとしても、憲法の解釈は曲げられない”という信念には十分な説得力が感じられてなかなか感動的。昨年、“中国の脅威”を理由にして我が国の憲法解釈をネジ曲げてしまった人々は、このシーンをどんな気持ちで見るんだろう。

後半は、U-2撃墜事件でソ連の捕虜になった米兵をこのアベルと交換するというストーリーであり、前半部分はそのための伏線だった訳であるが、正直、緊迫感は希薄であまり盛り上がらない。脚本を担当したコーエン兄弟スピルバーグとの嗜好の不一致が原因のような気もするが、おそらく脚本を含めてアラン・パーカーあたりに監督を任せておけば、もっと面白い作品に仕上がっていただろう。

ということで、帰宅後、めったに見ないNHKで「新・映像の世紀」なる番組を見ていたのだが、奇しくもタイトルは“冷戦・世界は秘密と嘘に覆われた”であり、本作で描かれていたような米ソのスパイ合戦がテーマになっていた。番組自体はこれで4回目なのだが、相変わらず我が国のマル秘エピソードがほとんど登場しないのがとても不思議でした。